インタビュー

中原 冱子さん/夢を叶える新技術で、快適な住空間を創る。

中原 冱子(なかはら のぶこ)さん
株式会社ケミカルクリエイト 代表取締役
Profile/1966年北九州市生まれ。大学卒業後、地元大手企業に就職し、電気設計を担当する。25歳で転職し、その後契約社員として2年勤める。27歳のとき、コーヒー事業を立ち上げる。3年で撤退し、準備期間を経て1999年『株式会社ケミカルクリエイト』を設立。産官学連携で商品開発を行い、環境と人にやさしいフローリング材や塗料を提供している。

夢を叶える新技術で、快適な住空間を創る。

「ずっと創りたかった商品ができた」と、目を輝かせる中原冱子さん。諦めずに夢を追いかけ、起業14年目に願いを叶えた。10月1日、光触媒の床材「エアーウォッシュ・フローリング」を発表。光のエネルギーで消臭や抗菌の機能を生み出す、画期的なフローリング材を開発した。

未知の分野で起業
大学卒業後は大手企業に就職したが、仕事にやりがいを見出せなかった。時代はバブル景気の真っ只中。株式投資をきっかけに、経営に興味を持った。「とにかく自分で会社を興してみたくなったんです。それで唯一興味があったのが、コーヒー」と屈託なく笑う。

どうせなら好きなことをやりたいと思い、コーヒー店に弟子入りして修業した。27歳で独立開業し、アルバイトを100人ほど雇ってコーヒーサービスを展開。業績は順調だったが、3年で事業から撤退する。多くの人をマネジメントする大変さを学び、今度は少人数で同じベクトルに向かう仕事がやりたくなった。

新規事業を模索するなかで辿り着いたのは、住環境の改善だった。中原さんは喘息持ちで、幼い頃からアレルギー症状に苦しんできた経験がある。新しい家に引っ越したときに症状が悪化し、弟もぜんそくを発症した。住宅建材が人の健康を脅かす “シックハウス” という言葉が使われ始めた時代だった。「新築の家というのは夢じゃないですか。その夢で子どもたちが病気になるなんておかしい。私はそれを何とかしたいと思ったんです」。

中原さんは33歳で会社を設立。住宅環境に特化することを決め、猛勉強した。理系出身とはいえ、環境や建築は未知の分野。インターネットで情報を収集し、専門書を読みあさり、展示会やシンポジウムには積極的に参加した。

顧客に役立つことが最高のモチベーション
アレルギーを引き起こす細菌やウイルスは、床のホコリに蓄積するため、「床そのものに空気清浄機のような機能を持たせたい」と中原さんは考えた。光触媒に魅力を感じていたが、太陽光がある屋外では有効でも、室内活用はまだ技術が及ばなかった。

そこで東京や大阪の企業に声をかけ、各社の技術を集積した商品開発に着手した。「すごくワクワクするのと同時に、本当にできるのか不安もいっぱいでした」。そして3年後、有害物質を軽減し抗菌力を発揮する床材「サプル」が完成した。

しかし、画期的な新商品は、多機能を目指したがゆえにコスト高になった。中原さんには不本意な価格設定だった。「子どもたちに安全な環境を提供するためには、もっと廉価なものでたくさんの人に使ってもらえるようにしたい」。そんな想いを抱えていたとき、九州工業大学で光触媒の研究をしている先生と出会う。最先端の技術を知り、今度こそ理想の商品ができると確信。北九州市に事業計画が認められ、産官学の共同研究開発が進められた。「高いお金を払うからではなく、グリコのおまけみたいに機能を手にしてほしい。軽やかに緩やかに自然に、付加価値を届けたいんです」。

直観を信じて、ゴールに向かって走り続けた中原さん。知らないことは素直に教えを請い、誠実な姿勢を貫いてきた。「研究開発は失敗の連続。でも打ち続けないとヒットは出ません」。新しい機能を生み出す挑戦は終わらない。

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