インタビュー

上村 忠実先生/シンプルだから奥深い。「詩」の表現にみる「ものの見方」

上村 忠実先生
福岡女学院大学 人文学部 言語芸術学科 准教授
福岡県生まれ。西南学院大学大学院文学研究科(英文学専攻)博士前期課程修了後、福岡女学院大学に赴任。現在、同大学で、イギリスの「文化・文学・芸術」を教える。専門はイギリス文学(詩)で、イギリス文学とキリスト教の関係などについて研究。主な著書に「テーマ・シンキング叢書 旅」(2015年)などがある。

多面的な視点を育てる
シンプルだから奥深い。「詩」の表現にみる「ものの見方」

同じものを見ても人によって捉え方は違う。また、同じ人間が同じものを見ても、時と場合によっては異なる感情を抱くことがある。ものの見方や捉え方には、どうしてこのような違いが生じるのだろうか。 今回話を聞いたのは、福岡女学院大学の上村忠実先生。イギリス詩を題材に、学生たちにものの見方についてや、古くから残る名作を学ぶことの意義を教えている。詩という短くてシンプルな言葉が、いったい私たちにどんな学びや気付きをもたらすのか? 上村先生に話を聞いた。

心の状態が「ものの見方」に影響を与えている

「夜という言葉に、どんなイメージがありますか? 暗い、怖い、闇、そういう捉え方をする人が多いなか、ウィリアム・ブレイクというイギリスの詩人は、『夜は天使たちに守られている時間だ』と歌いました。そう捉えたら、イメージは一転。とても温かで心落ち着くものになりませんか?」。

私たちが普段何気なく目にしていることや当たり前だと思っているものも、もしかしたら別の見方ができるのではないか? 「時にはそう立ち止まって考える必要がありますね」と上村先生は言う。ものの見方の多様性を意識すれば、他の人の立場に立って考えることもできるようになるだろう。「相手の立場に立ちなさい」と諭されるだけではイメージしにくいが、文学作品を通して対立性や多様性を考えると、それが心にスッと入ってくるから不思議だ。

「学び」には人生を動かすきっかけが眠っている

古くから残る作品には、時間も空間も超えた普遍的な価値がある。「さらに原文に触れることで、より深い学びが得られる」と上村先生は言う。「たとえば、童謡で唄われる『きらきら星』。イギリスのマザー・グース(伝承童謡)の原詩を読んでみると、星は『地上高く輝き、旅人を導く存在』という表現があります。そしてそこから、その星の正体は常に北を示す北極星だということが分かるのです」。易しい言葉でありながら、そこには深い意味があることに驚く。

「私がイギリス文学研究の道に進んだきっかけは、大学時代の英詩の講義で、ウィリアム・ブレイクに出会ったからです。わずか1行の『夜』についての表現に心が震え、価値観が揺さぶられました。このように、ふとしたきっかけがその後の人生に影響を与えること、そのような力が学びの中に眠っていることを、イギリス文学を通して多くの方に伝えていけたらいいですね」。

美味しい紅茶とスコーンが並ぶアフタヌーンティー、季節の花で彩られたイングリッシュガーデン、はちみつ色に輝くテラコッタがおしゃれな街並みなど、誰もが少女の頃一度は憧れたであろうイギリス。学生の頃に英語が苦手だった人も大丈夫! 心地よい英語のリズムやイギリス詩の世界観を味わいながら、学ぶことの楽しさを再発見しよう。

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