インタビュー

白水 ルリ子さん/どん底の経験が、経営者としての手腕を磨いた。

白水 ルリ子さん(旧姓:伊原)
株式会社晴天(あおぞら)代表取締役
2003年葬儀専門のアウトソーシングである『(株)晴天』設立。人材派遣やコールセンター、葬儀のプロを育成するスクール事業を展開。現在は、葬儀を老人ホームの福祉施設やホテル、寺院などで行うという従来にないオリジナル葬儀の企画プロデュースを行う。26歳のときに背負った1億3,700万円の借金を10年で完済した経験を持つ。

どん底の経験が、経営者としての手腕を磨いた。

最高潮の喜びから一転、彼女の27歳の頃はどん底を這っていた。26歳で1億3700万円の借金を背負うことになった白水ルリ子さん。当時の苦悩は、現在のはきはきとした声と太陽のような笑顔からは想像もつかない。94年楽しいことが大好きだった白水さんは「マイケルジャクソンを福岡に呼ぼう!」という、ともすれば夢のような目的のため仲間たちとエンターテインメントの会社を設立した。96年なんと念願が叶う。福岡公演を実現させたのだ。公演は成功をおさめ歓喜の渦の中にいた彼女の人生が、突然変化したのはその直後だった。興行師らにチケットの売上金を持ち逃げされ、巨額の借金を背負ってしまった。

逃げなかった20代

借金は26歳の彼女が背負うには途方もない金額だった。借りていたのは、公演を応援してくれていた家族や親戚を中心に25、6人ほど。自力での全額返済を誓い、早朝から深夜まで複数の仕事を掛け持ちしながら、文字通り休みも寝る間も惜しんで働いた。「不思議なもので、目的があると眠くならなかったのよ」とあっけらかん。なんとその後、10年で全額返済が実現したのだという。方法を尋ねると「まず借金の総額を15年で返済しようと考えたの。まず15で割って一年間分の額を出し、それを12カ月で割り、30日で割り、さらに24時間で割ると、時給1050円ほどだったんです。その数字を見ると、いけるかもって思って…。今振り返るとその計算は、365日24時間働いて全額返済する計算で、食事・睡眠の時間や、生活費のことを考慮していなかったのだけどね」と笑う。そして予定より5年も早く、有言実行を遂げる。

新規事業を閃く

返済中の33歳、彼女は会社を設立した。「最初の数年は返済のためのアルバイト生活のみ。次第に周りが見えてきて…」。最初は葬儀の司会業をやりたいという友人の応援から、葬儀業界のことをとことん調べたことがきっかけだった。「福岡にその時2社あった葬儀の人材派遣の企業に電話をかけて聞いてみたんです。そうしたら毎日仕事はあるよっておっしゃったんです。“毎日あるよ”。この言葉が決め手でしたね」。そうして人材を育てるスクール業と、コールセンターを含めた葬儀業界のソフトを提供するという新規性のある事業を閃いた白水さん。会社は年々発展を遂げている。

「私、クレームがまったく嫌ではないんです」とまたまた驚き発言をする白水さん。「クレームを受けると、早く切り上げたいとか、上司に判断してもらいたい、と避ける人も多いのですが、真摯な態度で向き合い、じっと耳を傾けると絶対に最後は分かっていただけます」と言う通り、白水さんは会社設立当初からクレーム対応は必ず自らが行ってきた。

スーパーウーマンのようにも見える白水さんは自分のことをこう評する。「私は元々計算が苦手だし、計画も嫌い。なるようになると思って楽をして誰かのせいにしてきた。しかし、借金だけは誰のせいにもできなかった。厳しい取り立てからは絶対に逃げられなかったからこそ向き合って返済したんです」。どうすれば返済できるのか、その考え方が図らずも経営者視点となり彼女を起業家へと生まれ変わらせた。幾多の困難とまっすぐに向き合い、自分の心をごまかさずに生きる彼女の姿に学ぶことは多い。10月29日に行うトークライブでは、そんなまっすぐな彼女の言葉たちが聞けるはず。

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