インタビュー

江副 直樹さん/目に見えない仕事が人の心をつかむ。 まちに息を吹き込む、“元気の仕掛け人”。

江副 直樹(えぞえ なおき)さん
『ブンボ株式会社』代表
佐賀県出身。米屋、出版社、コンクリートブロック工場勤務を経験ののち、コピーライターへ。97年『有限会社ブンボ』設立. 地域活性化と雇用創出を目的とした、大分県竹田市の「食育ツーリズム雇用創出大作戦」や、筑後の「九州ちくご元気計画」など、多岐に渡る事業プロデュースが注目を集める。朝倉郡東峰村にて、趣味の釣りを中心とした田舎暮らしを謳歌中。

江副さんへ3つの質問
1. この仕事に向いている人は?
到達イメージが鮮明な人。
オファーが来たときは、着地点を描けているのが理想。むしろ着地点をすぐに描けない仕事は請けないようにしています。

2. あなたのバイブルは?
今は東峰村での田舎生活をしていますが、そのきっかけになったのは、20代半ば頃に読んだアルビン・トフラーの「第三の波」。パソコンとネットの登場でここまで生活が変わるのかと、衝撃を受けたのを覚えています。

3. あなたのメンターは?
東急ハンズのプロデュースを手がけた浜野安宏さんからは、“コンセプト”という考え方の基本を、編集工学研究所の松岡正剛さんからは、既存の要素をさまざまな手法で新たな価値を生み出す“編集”について教わりました。

目に見えない仕事が人の心をつかむ。
まちに息を吹き込む、“元気の仕掛け人”

なにやら最近“ちくご”が元気らしい。野菜を使ったベーグルやアイス、昔ながらの味噌などの物産品を目にすることが増え、さらには筑後の地で行われるイベントの話題を耳にすることも。そこには、地域活性化と雇用創出を目的とした、「九州ちくご元気計画」の活動があったようだ。今回は、その“元気の仕掛け人”江副直樹さんに話を聞いた。

コピーライターから、
商品開発から携われるプロデュースの道へ。

プロデュース業の発端は前職のコピーライター時代にあった。「コピーライターの仕事にはとても満足していましたが、商品コピーを書いていくうちに、自分がその商品を評価できないことが増えてきたんです。消費者として気に入る商品がないという不満もあって、コピー以前の商品開発から携わりたいという思いが次第に募っていきました」。

その当時、仕事の細分化・分業化が進み、スペシャリストが輩出される一方で、全体を見る総指揮者がおらず、失敗に終わるプロジェクトを見聞きしたこともあったそう。「それならば自分がそのポジションに立てばいい」と江副さんは“プロデューサー”を名乗ることにした。

形のない仕事にプロデュースの本質がある。

手がけたプロジェクトは数え切れないが、「九州ちくご元気計画」は江副さんの代表的な仕事のひとつ。「地域の人々の力で、まちを元気にするには─」。その課題の先にあるビジョンは明確だった。例えば、繁忙期と閑散期のある農業は、農産物を加工品にして販売することで、1年中安定した収入を得られ、新たな雇用を生む仕組みに繋がっていく。

「実際のもの作りや、事業の細かいディティールは現場に任せます。私は全体を把握し、大枠から外れないように整えていきます」。さらりとそう語る江副さんだが、関わる企業は実に80社以上。農業、工業、商業…それぞれの分野のデザイナーやクリエイターを引き合わせ、全体の統率を取るのは安易なことではない。また、「江副さんに任せればなんとかなる」と地域の人々が受身の態勢のこともあるが、地域の人々が本気にならなければ、作った仕組みも一時的なもので終わってしまう。それゆえ、成功事例を共有する勉強会を開き、意見を交わしながら、地域の人々のモチベーションを上げることに力を注ぐ。「夢を応援するのは簡単だけれど、その地域が元気であり続けるのは難しい。大切なのはコンセプトワークと携わる人々の意識改革。そこができれば私の仕事は半分終わったようなもの。人々との目に見えないやりとりに隠れたものこそが、プロデュース業の本質かもしれません」。

一時的ではなく、人々が自らの力で前向きに生活を営んでいく。それは、意識改革という江副さんの目に見えない仕事が、これからも人々の心の中で生き続けていくことでもある。

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