浅岡 柚美(あさおか ゆみ)先生
中村学園大学 流通科学部教授 経営学博士
立教大学文学部心理学科卒業後、企業での勤務を経て1995年中村学園短期大学家政科講師へ。1998年助教授。2004年立教大学大学院ビジネスデザイン研究科修了。同年、東京成徳短期大学ビジネス心理科准教授。2008年より現職。2010年立教大学大学院経営学研究科博士後期課程修了。研究テーマは顧客を志向した製品やサービスのデザイン。
サービスの質を高めるには “感性” がカギとなる。
心を動かす、これからのサービスマーケティングとは?
私たちは日常、美容室で髪を切ったり、ホテルに宿泊をしたり、形のないサービスを常に体験している。そんな身近なサービスに、心が躍ったり、失望したりした経験はない? 実は、感動するサービスには仕組みがあった。今回は、中村学園大学でホスピタリティや、サービスマーケティングの研究をしている浅岡先生に話を聞いた。
サービスの質の向上は感性を磨くことから。
一度利用したレストランで好みの料理を覚えてくれたり、心のこもったおもてなしを受けたときあなたはどう感じるだろうか? 今、この日本のホスピタリティが海外でも注目を浴びてい る。国が違えば、ホスピタリティやサービスの質の重要度合いは変わる。「例えば提供されたサービスに対して、納得のいかない対応をされた場合、日本人の社会人と日本人学生と中国在住の中国人の3者で違う評価をするという結果が明らかになりました。日本人の社会人は“悪いものは悪い”と判断しますが、中国人は “よくも悪くもない”と答えた人が多いという結果に。まだ日本のようなサービスをうける機会の少ない中国社会では、サービスのよし悪しの基準をはかるモノサシを持つ人が少ないと考えられます。また日本人の社会人と日本人学生を比較すると、社会人のほうが評価が厳しい評価に。これらの結果から、日本人の社会人は社会に出てからよいサービスに触れる機会が増すことで、自分なりのモノサシを作り、サービスのよし悪しを図れるようになるのだと考えられます」と浅岡先生。
つまり、よりよいサービスを提供するには、よいサービスを受け、常日頃からよし悪しの判断をするために感性を磨く訓練が必要というわけだ。
「あったらいいな」を形にする
クロネコヤマトでお馴染みのヤマト運輸の宅配便サービスにも注目したい。1976年代当時、荷物を送るには6キロまでという制限つきでの郵便輸送か、手続きの複雑な国鉄を利用しての輸送サービスしか選べなかった。そこでヤマト運輸は「こんなサービスがあったらいいな」という顧客側の視点で、もっと気軽に全国どこへでも荷物を送れるサービスの仕組みを作った。そのことにより、私たちは送りたいものを送りたいときに、日本中どこへでも気軽に送ることが可能になった。「よいサービスと利益を出すことはトレードオフの関係にあるので、これらを同時に成功させることは難しいのです。最初は利益を度外視してでも、お客さまのために何ができるのかを考え、次にサービスの質を保ちながら利益を出していくにはどうしたらいいのかを考えることが大切です」。今までにないサービスで、求められているものを仕組み化し、“サービスをデザイン”することで成功したのがヤマト運輸だったのだ。
今回のゼミでは、企業の事例を用いて心を動かすサービスマーケティングを学ぶ。明日から仕事場で実践できるヒントが見つかるはず。