インタビュー

田中 大士さん/ものに込められた作り手の技と心、日本文化の多彩な魅力を伝えたい。

田中 大士(たなか たいし)さん
『有限会社田中総本店』 代表取締役社長
北九州市出身。九州経理専門学校卒業後、田中総本店でアルバイトとして働き始める。正社員を経て、30歳のとき代表取締役社長に就任。老舗人形店の3代目となる。2011年、小倉のメルカート三番街にギャラリーやアトリエも兼ねた雑貨の店『kiste(キステ) Craft ArtDesign』をオープン。街づくりや地域活動にも積極的に参加し、熊手銀天街組合長、黒崎商店連合会副会長を務める。

http://www.ningyo-tanaka.com/

田中さんへ3つの質問

Q. この仕事に向いている人は?
A. 日本の文化が好きな人。ものに興味がある人。商品に対する思い入れがある人。

Q. あなたのバイブルは?
A. 「三国志」などの歴史小説や、歴史のテレビ。時代背景が違っても、歴史上の人物を取り巻く環境と実際に起こった出来事は、経営や街づくりに通じるものがあると思います。

Q. あなたのメンターは?
A. 関わっているすべての人から、いろいろなことを学んでいます。

ものに込められた作り手の技と心、
日本文化の多彩な魅力を伝えたい。

黒崎商店街の中にある『人形の田中』。店頭を飾る季節の商品は、昔ながらのアーケード街に華やぎを添える。ここにはいつでも日本の四季があり、心和む時間が流れている。

伝統を守りながら進化する人形業界

「業界一若い社長」と言われる田中大士さん。就職を考えていたときに人形店を営む父親が入院し、20歳でこの業界に入った。「若いころから仕入れに同行し、いろいろな商品を見る機会がありました。恵まれていたと思います」。

田中さんの仕事は、よい商品を仕入れて顧客に紹介すること。作家の想いや技術、素材を見極める力が重要だ。確かな目を持ち、作家から信頼されなければ、一流の商品は扱えない。一点たりともカタログで選ばず、直接工房を訪ねて仕入れをしている。

扱う商品は、雛人形、鯉のぼり、盆提灯、羽子板など。季節ごとに模様替えをするため、店内の様子はがらりと変わる。また、時代ニーズに合わせて新商品も増えている。「お人形の世界は、驚くほど変化しています。鯉のぼりは耐久性のある新素材が主流になり、雛人形の形態も大きく変わりました。デザインや種類も多種多様です」。

現在店頭にある鯉のぼりは、20種類以上。通常は3種類程度の店が多く、全国的にも珍しい品ぞろえだ。「それぞれによいところがあって紹介したいので、どうしても多くなるんですよ」と笑う田中さん。ものを生かしたい想いが、その数に表れている。

世界に視野を広げ、チャレンジを続ける

「人形店は、頻繁に来てもらえる場所ではない。もっとお客さまと接点を持てないだろうか」と考えた田中さんは、店に木のおもちゃを置くことにした。安心安全で高品質のおもちゃは、子どもの誕生祝いにもなる。「記念日」というキーワードで、新しい展開を試みている。一昨年は、小倉に『キステ』をオープンした。手作りのおもちゃ、地元作家のアクセサリーや小物を販売し、「買う人」と「作る人」の架け橋となるような店を目指している。

田中さんの夢は、「日本文化を世界に伝えていくこと」。その一環として、昨年から上海の日本商品を取扱う店に鎧を展示している。「お人形の着物一つにしても、上質なものに触れる機会になる。国内の道具類は、とてもていねいに作られています。世界に誇れる日本独自の文化だと思うんです」。

伝統を継承していくためには、新しい工夫も必要。「人形屋としての軸を大切にしながら、いろいろなことにチャレンジしていきたい」という田中さん。古きよきものを守りながら、若い感性で業界に新風を吹き込んでいく。

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