岩崎達也(いわさき たつや)先生
九州産業大学商学部商学科教授
法政大学大学院イノベーション・マネジメント研究科 兼任講師
群馬県生まれ。大学卒業後、博報堂に入社。コピーライターとしてカネボウ化粧品、スズキ自動車、サントリー、JRA、味の素、ブリヂストンなど多数企画、広告制作に携わる。日テレでは、バラエティや情報番組企画のほか、「それって、日テレ」の会社のキャンペーンの企画制作も担当。制作会社の執行役員、法政大学大学院客員教授を経て現職。
愛され、売れるためのブランドづくりとは
ただの「物」にするか、愛されヒットするモノにするか。どこを切り取り、伝えるかが商品価値を決める。
「4チャンネル」「日本テレビ」など、それまで人によって呼び方がまちまちだった「日テレ」のブランドイメージを統一した仕掛人。ワールドカップやオリンピックの宣伝統括なども手がけてきたスゴイ人が、実は今、福岡にいる。今回お邪魔した、九州産業大学の岩崎達也先生だ。
製品を売れるモノにするのは、人の知恵
「社員間でも『日本テレビ』『4チャン』と自社の呼び方が違うのに、目指す目的を同じくできるのだろうか」。日テレに入社した当初、岩崎先生はふとそんなことが気になったという。ちょうど、開局40周年キャンペーンの担当になったことで、宮崎駿監督によるブランドマーク「なんだろう」の起用と「日テレ」の呼称統一を図り、ブランドイメージを定着させた。
4月に赴任した大学で教えるのは、「ブランド論とマーケティング」。「製品を “商材” にする際、どこを切り取っていくかがとても大切なのですが、売っている人たちがそこに気づいていない。何かモノを売る場合、そのときのシチュエーションやターゲットによって、言葉の持つ意味は変わるから、多面的にいろんな切り口で考えることが大切なんです」。
例えば、何の意味もない形をした製品を、「コップ」と名づけ、その使い方を定義づけるのはブランドマネージャー。単なる皿でも、「猫ちゃんのための新しいお皿」として販売すれば、ペットを愛する層に市場ができ、売れる可能性があるのだ。要は、真っ白な製品を商品にするのは “人間の知恵”。どこをどう切り取れば、一番売れ、愛されるのか。製品と商品の間にある切り口の探し方と、その伝え方がプロモーションの鍵になるという。
切り口次第で、ブランドイメージは変化する
そういったブランドづくりの盲点は、地方創生の場面でも。ブランド論のニーズが高まり始めた頃は、そのノウハウがなく上手く宣伝できなかった地域もあれば、逆にいろんなイメージがつきすぎて、整理することから始めた地域もあった。「そういった意味では、福岡の街も、まだまだブランディングのし甲斐がある」と岩崎先生。関東圏の人からすると、福岡は「屋台・ラーメン、山笠・どんたくの街」というイメージが根強くあり、実際に福岡に来て意外な面を知るという。
「魚が美味しく、宗像の沖ノ島など国宝がたくさんあって歴史深い街だということにビックリ。200万都市でありながら自然も豊かな福岡は、それに加えて長い歴史が育んできた文化もある。食だけでなく、文化や国際交流の面にもフォーカスすると、また違ったブランドイメージで人を呼び込めるかもしれませんね」。アヴァンティゼミではどんな切り口で、どんな話が聞けるのか。乞うご期待!