インタビュー

因幡美子さん/生涯をかけるにふさわしいわくわくする仕事を求め「やる」と覚悟を決めた

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因幡美子さん
『漢方サロン りんどう』 代表
1975年福岡市生まれ。鍼灸師・柔道整復師。15年間『堺整骨院グループ』に勤務し初代統括スーパーバイザーを務める。2016年 『株式会社りんどう漢方薬品』を起業。同時に「赤ちゃんがほしい!」「体質改善したい!」そう願う女性たちのために『漢方サロンりんどう』を開設する。2児の母。

生涯をかけるにふさわしいわくわくする仕事を求め「やる」と覚悟を決めた

「この事業は人々に求められている。皆を幸せにすることができる」。そう確信した因幡美子さんは一昨年、女性による女性のための漢方サロン『りんどう』を立ち上げた。漢方の選薬に、整体や生活習慣のアドバイスを組み合わせて、女性の不調の改善や妊活のサポートを行う。

整体と漢方の専門知識をもち、経営者として経済や人財育成にも精通する彼女だが、それらは起業家を目指して準備してきたものではない。実に様々な人生経験から必要な学びを得てきたのだ。

全ての出来事に意味がある

因幡さんが大学卒業後に就職したのは証券会社だった。CAに憧れて英語科で学んだものの、不況で航空各社の採用はゼロ。「それなら、いいお嫁さんになるために経済を学ぶのもいいか」と証券レディの道へ。働きながら花嫁修業の一貫としてカルチャーセンターで指圧教室に通ったのが転機となる。マッサージで人を癒して喜ばせることに、今まで感じたことのないやりがいを見いだした彼女は「これを仕事にする!」と心に決めた。

「やると決めてから方法を考えました。不足している知識や技術は、本気でやりたいなら後から得られる。過去の経験が意外なところで役立つこともあります」。

4年間勤めた会社を退職して指圧の集中講座を受けた因幡さんは、道すがら見かけた患者の絶えない整骨院に飛び込みで応募。証券会社の営業職で培った行動力が生かされた場面だ。「募集はしていない」と言われながらも「どうしても現場で腕を磨きたい」と直談判し、その日の午後から出社した。その後、整骨院に勤めながら結婚し、勤務の傍ら柔道整復師・鍼灸師の専門学校に通学。国家試験の半年前に第一子を出産した。27歳の頃だった。

多忙を極める彼女に対し、近隣の女性から「働く嫁に対する苦言」を言われたこともあったが、「心配をかけて申し訳ない、でもどうしてもやりたい」と真摯に説得した。こうして「働く母」の視点を得たことが、家庭における女性の健康の重要性について考えるきっかけにもなった。

女性による女性支援を目指す

勤務すること15年、院長として現場に立ち、多くの患者の痛みや不調に向き合いながら、因幡さんはあることに気づく。来院する多くの患者の中で、なかなか症状が改善されない女性たちは皆、「冷え」や「ストレス」を抱えている。そこで、海外では鍼灸や整体と漢方は必ずセットで治療が行われていることに目をつけた彼女は、漢方薬取り扱い部門を新設するよう会社に働きかけた。ここで彼女は恩師である整骨院グループの代表に、彼女自身が会社を立ち上げることを勧められる。

「その事業は、女性であるあなたが代表になるべきだ」その言葉を受けて起業を決意した。39歳の春だ。「女性による女性支援のための企業です。女性を根本から健康にすることで、子どもも家庭も笑顔にしたい。会社も、従業員である女性が長くキャリアを積めるようにしたい」。道なき道を行く因幡さんのチャレンジは、ぶつかった困難や悩みを数え上げればきりがない。しかし、やると決めていたから、やめる選択肢はゼロだったという。

たおやかな外見からは想像もつかないほど逞しい語調で「死ぬこと以外はかすり傷」という名言を口にして、周囲を明るく照らす快活な笑顔を見せてくれた。

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