坂田 攻(さかた おさむ)さん
株式会社JTB九州 北九州支店
地域交流ビジネス担当課長
神奈川県川崎市出身。法政大学社会学部卒業後、1993年(株)日本交通公社(JTB)へ入社し福岡支店へ配属。2006年のJTB分社化後も九州に残り、2010年2月北九州支店へ着任。法人営業の傍らで北九州市と「工場夜景ツアー」の商品化に取り組み、大ヒットさせた立役者。
坂田さんへ3つの質問
1. この仕事に向いている人は?
好奇心が旺盛な人。いろんな世界とコミュニケーションがとれる人。
2. あなたのバイブルは?
失敗を恐れずチャレンジする姿勢を学んだユニクロ・柳井社長の「一勝九敗」、仕事で迷った時はドラッガー「マネジメント」、ソーシャルビジネスに関心を持つきっかけとなった「20円で世界をつなぐ仕事」、学生時代にどっぷりはまった村上春樹「風の歌を聴け」など。
3. あなたのメンターは?
様々な人の良い部分や尊敬できるところを吸収し、常に自分なりに目指す将来像を創り続けています。
よそ者ならではの視点を強みに変えて
地域とともに生きる旅行会社を目指す
幻想的な化学工場の光に、複雑な配管が独特の造形美を醸し出す。『JTB九州北九州支店』が2011年2月から販売した「北九州工場群夜景鑑賞ツアー」はこれまで第5弾を数え、1,500名以上の参加者を魅了してきた人気商品。縁もゆかりもなかった北九州へ着任後、わずか1年で産業古都・北九州の魅力を全国に売り出した立役者が坂田さんだ。
行政と二人三脚でつくりあげた
地域ブランド商品「工場夜景ツアー」
高校生の頃から世界各地の地形や気候、人種や文化に関心があった坂田さん。学生時代はヨーロッパやオーストラリアをブラブラ旅し、多様な異文化に触れてきた。卒業後は『JTB』へ入社し、企業の団体旅行などを担当。様々なオーダーメイドツアーを企画した。これまで30カ国、100回以上の渡航歴を持つ海外旅行のプロフェッショナルだ。
そんな坂田さんが2年半前、北九州支店への異動を機に取り組んだのが「地域交流ビジネス」。「旅行会社である私たちのネットワークやスキル、ノウハウや流通網などのリソースを、地域貢献に活用したい」と、行政と一緒に全国的なブームになりつつあった「工場萌え」の北九州でのツアー化を進めたのだ。通常の法人営業業務が終わった後、市の担当者と夜更けまで工場が見えるスポットを回り、景観やツアーコースだけでなく安全面や所要時間、バスの駐車スペースなど、旅行業者ならではの知識とノウハウから一つずつ詰めていった。
地域社会に根づいた
「継続性のある着地型観光」へ
好評を博したこの「工場夜景ツアー」は、これまでの「人を送り出す」観光スタイルではなく、「人を呼び込む」着地型観光のビジネススキームへの挑戦だったが、採算面は厳しい。北九州と同様に、全国の多くの自治体でも着地型観光を進めているが、ビジネスとして成立しにくいため旅行会社は参入せず、旅行商品造成のプロではない観光協会やNPOによる取組みがほとんどである。それでも「ツーリズム産業=人々の交流の促進」という坂田さんの視点やビジョンは、市民からの地域資源情報をウェブ上に展示する「北九州市時と風の博物館」、北九州の港湾地区を巡る「うみたび」、北九州フィルム・コミッションとの「ロケ地ツアー」など、北九州市の様々な事業にも携わり新しい動きを生み出している。
「通常、地域活性に取り組むのは地元出身者がほとんどですが、私にはよそ者だからこそ見える視点があります。全体を俯瞰し、客観的な目で地域の特徴を外へ売り出せるのです」。今年創業100年を迎えた『JTB』の母体は明治時代、日本の真の姿を英米人に知ってもらおうと立ち上げられた公益団体「ジャパン・ツーリスト・ビューロー」。坂田さんの志は時を超えて再び、地域の真の姿を伝えるために生かされていく。