福の神のように温かな笑顔の田中悦子さん。仕事ではまずじっくりと相手の話を聴いた上で、家選びのアドバイスを行う。安心して家の相談ができることから、多くの顧客が「女性の社長でよかった」と感謝の言葉を口にするという。
悦子さんの祖父は宮大工の棟梁だった。幼い頃から家づくりに親しみ、結婚してからも夫婦で父が経営する工務店を手伝ってきた。しかし工務店は閉鎖することになり、悦子さんも他の企業へと就職。二人の子どもの学費がかかる時期には「何とか稼がないと」と飲食店の経営も行った。しかし50代に差し掛かった頃、やはり家づくりに関わりたいと不動産会社を起ち上げる。「自分が好きなことだと頑張れるんですよね。家づくりやリフォームでよいものができるのが嬉しい」。とはいえ、土地の売買や建設、融資など億単位での取引となる不動産業。「この土地を買ってちゃんと売れるのか…」と決断の重さに心が折れそうになるときもある。「そんなときは神社へお参りをし心を鎮めます。仕事も家庭もいろんなことがあったけれど苦労とは思いません。仕事ができることに感謝しています」。
抱えるリスクも大きいため、先の先までを常に見据える。消費税やオリンピック、政府の施策など時流が大きく影響するからだ。並外れた商才で辣腕を発揮する悦子さんに「どんなことが喜びですか?」と尋ねると、意外な答えが返ってきた。「非情な現実もたくさん見てきたので、好物がお膳に並んでいるのを見るだけで幸せ。小さなことが大きな幸せに感じます。昨年、息子と娘が結婚したことは何よりの喜びですね」。大きなビジネスに挑みながら、ありふれた日常にかけがえのない幸せを見出し大切に想う悦子さん。だからこそ福の神を呼び、悦子さんが手掛ける家︱家庭の幸せを感じる場所︱に、人々は共鳴をするのだろう。
『有限会社 さくらハウジング』代表取締役社長
田中 悦子さん
1952年福岡県出身。父も母も七代続く宮大工の家系に生まれる。40代のときに家族を養うためラーメン店を起業。『大砲ラーメン』を経営する『株式会社大砲』代表取締役社長・香月均史氏の指南により人気店へ成長するも、土地や建物の相談を受けるうちに不動産業の開業を決意。2003年に『さくらハウジング』を設立し51歳で代表取締役社長に就任。2005年には法人化を果たす。「災難が起きたときこそチャンスのきっかけ」「苦労して手にいれた方がありがたみがある」という人生観を活かした経営で、家族4名・従業員とともに事業を展開している。
▲ 1.悦子さんのインテリアセンスが活かされた『さくらハウジング』の店内は、まるでカフェのよう。
▲ 2.『さくらハウジング』で企画設計を手掛けた中央区高砂のデザイナーズ店舗。
▲ 3.東日本大震災を語り継ぐ活動である、絵本「ひまわりのおか」朗読会を支援。悦子さんの尽力もあり、九州では2015年1月と2016年3月に福岡で開催された。今後も九州各地での開催を予定している。
さくらハウジング
福岡市中央区薬院2-1-4 アルモニ薬院1F
TEL/092-781-3307
Mail/info@sakura-fukuoka.jp
http://sakura-fukuoka.jp/
営 /10:00~19:00
休/土・日曜、祝日、夏季休暇、年末年始、GW