柔軟に逞しく生きる力を育むチャンスをつくり次世代につなぎたい。

「赤ちゃん先生プロジェクト」を北九州に導入し、働くママたちを応援している村上知子さん。「これなら育休中の社員も、会社とつながれる! と思ったんです」と声を弾ませる。物流会社の経営者を務めながら、活動を推進してきた。
赤ちゃん先生プロジェクトは、赤ちゃんとママが学校や高齢者施設などを訪問し、命の大切さを感じてもらうプログラム。2007年に神戸のNPOが始めたプロジェクトを、村上さんは翌年にインターネットで知った。「子育て中がメリットになるママの仕事づくり」という言葉に惹かれてすぐに問い合わせ、自社の拠点を活用して福岡小倉校を立ち上げた。
当初は会社の “部活” として取り入れた。育休中も子連れで会社に顔を出せ、つながりを持つことで復帰がスムーズになった。ママ講師は研修を受けて資格を取得する必要があり、施設訪問の際は謝金が発生する。現在は社外にも展開し、北九州で約60人のママ講師と、サポート役のトレーナーが10人育っている。「ボランティアじゃないところが面白い。講師役のママも成長できるんですよ」。
村上さんは他にもユニークな部活を導入している。自社内にラジオのサテライトスタジオを設置し、社員や知人が番組を担当したり、講師を招いて料理教室や心理学講座を開いたり。積極的に視野を広げる機会を提供している。
知恵と工夫で、時代の変化を好機に
人と接することが好きで、就職先ではシステムキッチンのアドバイザーをしていた村上さん。職場が市外に移転したため、初めは渋々父親が経営する物流会社で働くことに。27歳の転機だった。
暗い倉庫で、カタログの梱包や発送業務をこなす毎日。効率の悪さを父親に告げると、「じゃあお前がやれ」と言われた。「やってやろうじゃないの!」と奮起し、フォークリフトの免許を習得。リフトで力仕事が不要になり、女性だけで作業できるようになった。経理も担当し、仕事がどんどん面白くなった。当時は宅配サービスが台頭し、業界が大きく変化した時期。宅配の取引を始め、業務改革を進めたことで会社は黒字になり、業績は伸びた。「知恵を絞れば絞るほど、流れが変わってきたんです」と軽やかに語る。
縁あって40歳で結婚し、41歳で出産。自身も子育てをしながら仕事をしてきた。「先行き分からない世の中だからこそ、自分を磨いて生きる力をつけてほしい」。今の村上さんにとって働く目的は、次世代につなぐこと。仕掛け役として、前例のないチャンスづくりを楽しんでいる。
NPO法人ママの働き方応援隊『赤ちゃん先生プロジェクト』東京港校・福岡小倉校 代表
村上 知子さん
1960年北九州市生まれ。アパレル、システムキッチンメーカー、新聞社を経て、1987年より父親の経営する物流の仕事に就き、副社長として業務改革を推進。全員女性スタッフの物流会社『ジェイリンク』を経営する傍ら、「赤ちゃん先生プロジェクト」に関わり、2009年福岡小倉校、2011年東京港校を開校。
北九州で活躍する赤ちゃん先生とトレーナーのみなさん