「ミニ」の魅力と「らしさ」
シロノワール、知っていますか? 名古屋発祥「コメダ珈琲店」の名物です。
サクサクふんわり焼いたデニッシュパンの上でとろけていくたっぷりのソフトクリーム。メニューによると、そういう食べ物。いま、博多駅前の店で、それを食べながら、原稿を書いています。美味です。ただ、五十歳手前の親父が1人で食べるには、ちょっと恥ずかしい。
昔、名古屋に出張した時、もう一つの名物「小倉トースト」と一緒に食べて、名古屋メシの奥深さに感じ入ったものです。そのコメダが福岡に初出店したのは2013年。すでに県内に19店舗。調べてみると、コメダは42都道府県に店舗があり、名古屋の味が全国を制覇するのも間近です。
コメダに限らず、流通網の発達で地域限定だった品が、どこででも口にできるようになりました。グルメ情報が身近にあふれ、それを求める声が強まっていることも理由でしょう。特にその「引力」でヒト、モノ、カネを集める東京では、手に入らないものはないのではと思うほど。ラーメン、もつ鍋といった福岡の味もそうです。東京から来る知人を福岡でもてなす店探しも、苦労しています。
東京に負けず劣らず、福岡の引力も相当なもの。首都圏の留守宅から帰福する際、近所で土産を買ったのですが、福岡三越でも売っていました。名古屋メシだけでなく、東京名菓も普通に味わえるなんて、時代は変わったものです。
この街には阪急、パルコ、丸井など、全国ブランドが相次ぎ進出しています。街を歩けば、あちこちにコンビニがあり、その風景はまるで「ミニ東京」。東京と同じになるのは、たしかに便利で魅力的。でも、はて、福岡らしさはどうなるの? それが気になるところです。
朝日新聞西部本社 経済担当部長
前地 昌道さん
佐賀県基山町出身。福島、宇都宮支局を経て経済部記者に。今年5月から現職で、福岡勤務は2度目。