美しい光沢が特長の真珠アクセサリー。しかし、年が経つにつれてくすみが出ることから使用されなくなることも多く、斎藤敬代さんは長年それを残念に思ってきた。真珠本来の輝きを蘇らせる機械の実用化を知り、「私にできることはこれだ」とひらめきにも似た確信を得たという。
真珠養殖業の家に生まれた敬代さん。真珠のことは母貝の種類から海での育成までそのすべてを知る。真珠専門店を経営し、パールジュエリーデザイナーとしても活躍するように。子どもを育てながら働きづくめの日々を送った。
そんな敬代さんであったが、母親が亡くなったのを機に養殖場を閉鎖。53歳で仕事を辞め、これまでの分もゆっくりと暮らすつもりでいた。しかし、うつ病が発症する。「人に会うことも外出もできず…生きていることすら感じられなくなりました」。4年以上苦しみ、やっと快復してきた頃、今度は癌に。手術を行うも敗血症を起こし命も危うい状態となった。「一命をとりとめたとき、これは “頂いた命” だと思いました。これからは人の役に立つために生きていこうと」。他店と同じ宝石販売ではなく自分にしかできないことをやりたい。そう模索していたとき、真珠科学研究所で開発中だった真珠クリーニング技術が実用可能に。「劣化したがまだ使いたい」と願う人の真珠を再生しようと64歳で事業を再開。日本初の真珠リノベーション専門店を起ち上げる。
顧客が持参した真珠を敬代さんは知識と技術、感覚のすべてを使い、魂を込めて新品のように蘇らせる。その仕上がりは跡を継ぐ予定の娘が「お母さんが手掛けると真珠が生き返るね」と話すほど。美しい珠が連なりできる極上のパールネックレスを紡ぐかのように、敬代さんは真珠の再生を通して人の心や先祖代々の想いを、過去から未来へと大切に繋いでいく。
『リパール』代表取締役
斎藤 敬代さん
1951年生まれ長崎県出身。父は対馬で戦後いち早く真珠養殖を始め、『斎藤真珠有限会社』の創設、対馬真珠養殖漁業協同組合を設立した人物。両親のもと真珠養殖を学び、福岡市内の真珠専門店『有限会社西日本パール』を経営。両親とともに携わっていた斎藤養殖場の真珠は、皇后陛下にも献上された。その後は事業から離れ、闘病生活を送るが、真珠科学研究所の所長・小松博氏が開発した真珠クリーニング技術と出会い、2015年に『RePearl』を開業。翌年7月には中央区天神に2店舗目をオープンさせる。
▲1.古いデザインのリノベーションや服装や好みに合わせた長さの調節も行っている。「譲り受けたけど『どう使っていいかわからない』というものは相談してもらえたら」と敬代さん。
▲ 2.確かな診断や糸替えの繊細な作業ができるのは真珠養殖場と宝石店の両方を知ればこそ。
▲ 3.ミクロン単位の薄さで真珠層へのクリーニングを行い、本来の美しい輝きを復元。
RePearl(リパール)
福岡市中央区天神2-8-41 福岡朝日会館B1F
TEL/092-406-3333(開通は2016年7月27日〜)
MAIL/info@re-pearl.co.jp
営/10:00~18:00
休/日曜
※予約優先制