別居中の生活費は、どうしたらいいの?(婚姻費用について)
別居中であっても、配偶者に所得応じた、生活費(婚姻費用)の分担を請求できます。
別居中であっても法律上の夫婦関係は続きます。そして、法律上、夫婦は互いにその収入や資産の状況に応じて、夫婦や子どもの生活費などの婚姻生活を維持するための費用の分担をすることになっています。そのため、別居中であっても、お互いの生活費の分担について、話し合いや家庭裁判所の手続の中で取り決めをすることができます。家庭裁判所などでは、この生活費のことを、「婚姻費用」と呼びます。
婚姻費用の決定にあたっては、別居に至ったいきさつ(不仲の原因が夫婦のどちらにあるのか、夫婦関係が破綻しているかどうかなど)は、よほど極端な場合を除き、原則として考慮されません。これらの事情は、別居後、夫婦関係が離婚に至るという場合に、離婚時の慰謝料や財産分与として考慮されるべきであると考えられています。
もっとも、別居に至るほどに夫婦関係が悪化している時には、話し合いをしても、配偶者が支払いをしてくれない場合もありますね。その場合には、家庭裁判所に「婚姻費用分担請求調停(審判)」を申し立てて、調停の中で適切な分担額について話し合いをして決めたり(調停)、話し合いがつかなければ裁判官に、分担義務の有無と分担額を判断してもらうことができます(審判)。
具体的には、家庭裁判所は、毎月の生活費に関わることについては、できるだけ早く取り決めをすることが望ましいという考えの下、「養育費・婚姻費用簡易算定表」という参考資料(主に双方の年収と子どもの年齢に応じた統計的な資料)を広く活用しながら、金額についての話し合いないし決定をしています。
なお、別居から、実際に婚姻費用を支払ってもらえるまでに、何ヶ月も経ってしまう場合もあります。こうした時に、過去に支払ってもらえなかった婚姻費用について、遡って請求をできるのか、という問題が出てきます。この点、家庭裁判所の手続きでは、当然に遡って認めてもらえるものではありませんが、内容証明文書で請求をした時や、調停の申し立てをした時など、婚姻費用の請求をしたことがはっきりと分かる時期までであれば、遡って認めてもらえることもあります。
最期に、「養育費・婚姻費用簡易算定表」は、インターネットなどでも閲覧をすることが可能です。また、従来利用されてきた算定表は、確かに一応の目安にはなりますが、それぞれの基準値・計算方式の適否から、事案によっては適切な分担額とは言い難い場合もありました。現在、算定表の改善について議論が進んでおりますので、これについてはまた、あらためてお話をさせてください。
東京都出身。早稲田大学法学部、同大学大学院、中央大学法科大学院卒。新60期。誠実かつ丁寧に一つひとつの案件に取り組むことをモットーとしている。案件が解決したときに依頼者の方々が見せる笑顔が何よりの励み。好きな食べ物は、納豆とチョコレート。 趣味は、旅行と写真。
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女性協同法律事務所について
「女性による女性のための法律事務所・女性の権利のための法律センター」を目標に、1989年に事務所を設立。現在では11名の女性弁護士が在籍している。相談者は圧倒的に女性。離婚事件が多く、相続などを含めると約6割が家事事件。つづいて破産・負債整理、セクシュアル・ハラスメントを含む労働事件、少年事件・刑事事件、性暴力や医療過誤、交通事故や学校事故などの損害賠償請求事件、通常の契約をめぐる事件など。法人のメリットをいかし、長期間にわたって「お一人様の老後」の世話をする成年後見の業務にも携わる。