みなさんは、なんらかの形で金融商品に触れていらっしゃるはずです。「投資」商品を購入した経験がないという方でも、「保険」などは掛けていらっしゃいますし、「年金」や「保険」として皆さんが積み立てたお金は、それらを集める年金機構や保険会社が、機関投資家として運用をしています。つまり、直接、間接の違いはあれど、皆さんの財産は、何らかの金融商品に組み入れられているのです。
金融商品には、どのようなものがあるのでしょうか? おおまかに分けると株や債券、ファンドや保険に分類できます。では、それらの本質や特徴について、しっかりと理解をしていらっしゃいますか? その理解のためには、何が確かで、何が不確かであるかを、整理して理解する必要があります。
「株(株式)」とは何でしょう?
英語では、StockとかEquityとかShareですね。株式は、会社の持ち分(所有)権であり、その会社を株主で共有していることを意味します。1単位のShareは、会社全体を小分けした最小単位で、その会社を所有していることになります。ある会社の株式総数の価値は、会社の価値全体と等しく、会社の価値を株主全員で共有(Share)し、各株主は株数分、会社を持っているのです。
「株」の確かなものとは何でしょう?
それは、会社の実態です。会社には、事務所や工場などの不動産を初めとして、従業員、製品の特許や製法など、有形無形の資産をもち、売り上げや利益を持っています。そして、同業種間で競争力のある企業ほど、利益が増加する可能性が高く、また企業として長期間存続することが期待できます。従って、株式市場で評価される企業価値(株価)は、1年間の収益の何倍から十数倍もの値段になります(この倍数は業種により様々です)。
企業収益に対する株価の割合はPER(株価収益率)と呼ばれ、株価の目処値としても使われています。
因みに、米国の株式市場では、長期平均の株価収益率は15倍程度です。
株の不確かなものとは何でしょう?
最近の残念な例としては、日本でも、総合電機メーカーや自動車部品の会社で起こったことですが、製品の欠陥や経営上の不正・誤ちにより、株価が急落して、何分の一にもなってしまったことは、皆さんも見聞きされたと思います。
企業の評価や評判が失墜し、収益に毀損が生じ、上記で述べたような収益獲得の持続性への期待が萎んだために、株価が急落したのです。当然、企業の価値そのものである、全株価の価値の合計、すなわち時価総額も急落しました。ひとたび、何か予想外のことが起これば、株価は激変するのです。
一方で、買収や提携、新製品の誕生など、思わぬ材料で、会社の将来への期待が膨らんで、急上昇することもあり得ます。
このように、株価は、たいへん変動しやすい性質を持っており、その変動率には注意が必要です。株式投資には、その変動率に対する覚悟が必要とも言えるでしょう。この株の価値の変動そのものを、「リスク」として認識する必要があるということです。ただ、企業は、長期で成長することを目指して運営されていますので、長期的に保有できるもの、自分の目で見て安心感の高いものを選んでいくことが肝要でしょう。
「株式」を考える際に、他に考えるべきものとしては、配当や株主優待があります。
配当とは何でしょう?
企業が獲得した収益の一部を、株主に還元・分配するものです。日本の企業も、最近では、配当を厚めにする傾向があり、企業収益に対する配当の割合も随分上がってきました。配当の割合を配当性向と呼んで、それを重視する投資のスタイルもあります。低金利の環境下では、配当を重視する投資スタイルを採る投資家も増えました。
株主優待とは何でしょう?
また、企業が株主に対して、金銭ではなく、自社の製品を配布したり、自社施設を割引で利用できるような仕組みを提供することがあります。鉄道会社の全線パスや、航空会社の株主専用の割引券が特に有名ですが、こうした仕組みを株主優待と呼びます。初心者向けの株式投資ガイドには、それらをことさら強調して株式投資を推奨するものもありますが、配当や株主優待は、企業収益に拠って結局は支えられています。やはり、企業収益の動向をしっかりと見ていくことが株式投資の基本と言えるでしょう。