前回に続き、今回もマリッジカウンセラーのゲールが私に課した「宿題」について書いてみよう。
瞑想、体操、趣味作りなどさまざまな課題の中で、最も印象に残っているのが「理想の男性像を紙に書き出す」というものだった。「髪の色、髪の長さ、肌の色、背丈、爪の形、癖、年齢、子どもの有無、どんな職業・趣味を持ち、どんな性格かなど、全て細かく、まるで実在する人を描写するようにね」
「えー! 夢物語でもいいの?」と私はふざけた。するとゲールは「そうよ。夢物語でいいの。現実に可能かどうかは絶対に考えないで」と念を押した。
当時の夫は金髪でぽっちゃり体型の白人だったが、私のノートには黒髪ですっきりとした長身の男性が描かれた(夢物語だから、いいよね!)。そのときは何も考えずにゲールに提出したが、数日して、ある考えが頭に浮かび、消えなくなった。それは「夫は私の理想の人ではなかった…」という、目をつぶっていたかった事実への気付きだった。見た目だけじゃない、性格も、何もかも…。この日を境に、私の心は徐々に離婚へと傾いていった。
離婚裁判が始まり、元夫の会社の福利厚生だったカウンセリングは唐突に終わりを告げた。
そしてゲールと会わなくなってしばらく経った頃、知り合いに一冊の本(※)を紹介された。
その本で紹介されている話の一つに、ジョン・アラサフという男性の体験談があった。アラサフはビジョンボードというものを作り、そこに目標や、人生で達成したいことを書いて貼っていた。
ある日、5年間も開けていない段ボールの中に、随分前に作ったビジョンボードを見つけた。それを見た彼は驚き、さらには泣き出してしまった。なぜならそのボードには、今、彼が住んでいる、大変な苦労をして手に入れたマイホームそのものが描写されていたからだった。これを「引き寄せの法則」というのだそうだ。
二番目の夫と結婚して数年経った頃、ふとあのメモのことを思い出した。メモを引っ張り出して読んでみて、私もアラサフのように驚いた。肌の色も身長も、髪の色も、職業も、性格も、何もかも、そこには今の夫そのものの男性像が記されていた。私自身は忘れていた、しかし脳が覚えていたのだろう。ゲールは確信犯だった。
これは彼女からの贈り物だから、私は今でも願い事は明確化してみる。これを読んでいるあなたも何かに引き寄せられてこれを読み、そして紙に書き出した理想の男性と、いずれ出会うのだろう。
※日本語訳『ザ・シークレット』ロンダ・バーン著(角川書店)
猪股るー
元アヴァンティ副編集長。2016年1月にロサンゼルスにて広告代理店「Ru-Communications LLC」を起業し、日本企業の全米進出をサポートしている。著書に『愛する日本の孫たちへ』(桜の花出版)、韓国で出版された語学テキスト『チョルムン イルボノロ マルハジャ(今どきの日本語で話そう)』(サラミン出版)などがある。
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