
退職金についても、財産分与を求めることができますか。

既に支払われた退職金は、財産分与の対象となります。将来支払われる退職金は、事案によります。
婚姻期間中の勤務に関して支払われた退職金は、夫婦で助け合って勤務を続けてきた結果に対して支払われたものですから、財産分与の対象となります。
例えば、30年間前に就職、20年間に婚姻、今900万円の退職金が支払われていて、財産分与をするという場合には、900万円のうちの、30年間分の20年間にあたる、600万円を夫婦共有財産と考え、その50%を請求したりします。
もっとも実際には、退職金から住宅ローンを完済したり、退職金が年金払いにされていたりと、もう少し複雑な検討が必要になることが多々あります。
これから支払われる、将来の退職金については、近い将来に支払われることがある程度は確実といえる場合(高い蓋然性がある、と言われたりします)には、財産分与の対象とされることが多いといえます。逆にいえば、そうでなければ、財産分与の対象とされません。
支給の確実さは、退職金規定の有無・退職までの期間の長短・企業規模・企業の経営状態などから考えられます。
近い将来とは、10年前後以内とされることが多いようですが、公務員や、退職金規定が整った堅実な民間企業等の場合には、もう少し期間が長くても、財産分与の対象となったりもします。
なお、将来の退職金に関する注意点としては、①金額と、②支払い方法、があります。
まず、①金額は、定年退職時の金額ではなく、財産分与の時点で退職をした場合の退職金見込み額(実際に退職をする必要はありません)になることが一般です(裁判例によっては、定年退職時の金額として中間利息を控除する事案もあります)。そのため、定年まで勤め上げたことに対する功労報償的性質の強い退職金制度では、退職金の金額が予想外に低いということがありえます。
次に、②支払い方法は、実際に退職金が支給されなければ現金を用意できないという場合に考慮が必要です。減額をしてでも今受けとることを優先するのか、受取時期を退職金支給後にするのか、その場合の合意内用と書面をどうするか等の検討が必要になります。
将来の退職金は、財産分与の対象として見落としがちですが、要件を満たす場合には、きちんとリストアップして、フェアな協議ができるといいですね。
首都圏と北海道を行き来して育ち、一橋大法学部卒。2006年、北海道から現事務所に入所。省エネ・脱使い捨て社会に関心があり、楽しく実践しているつもり。寒冷地仕様の体ながらクーラーも不要。物持ちもにも自信あり。
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女性協同法律事務所について
「女性による女性のための法律事務所・女性の権利のための法律センター」を目標に、1989年に事務所を設立。現在では11名の女性弁護士が在籍している。相談者は圧倒的に女性。離婚事件が多く、相続などを含めると約6割が家事事件。つづいて破産・負債整理、セクシュアル・ハラスメントを含む労働事件、少年事件・刑事事件、性暴力や医療過誤、交通事故や学校事故などの損害賠償請求事件、通常の契約をめぐる事件など。法人のメリットをいかし、長期間にわたって「お一人様の老後」の世話をする成年後見の業務にも携わる。