病室も個室になり 部屋にはお見舞いのお花が 窓辺にたくさんに飾られて
とても明るく気分が落ち着いた
食欲がなく 吐き気が続くのは変わってなかったけど
まわりへのストレスが減ったため 割と精神力を保てていた
その中で始まった 抗がん剤シスプラチンの点滴
シスプラチンはとても副作用がひどくて
特に腎臓に多大な影響を及ぼすので
点滴後 水分をたくさん取って どんどん尿を出さないといけないといわれた
そのため 点滴後の尿の量を測る必要があるので
それを測るビーカーと 「尿量測定」とかかれた紙と 鉛筆を渡された
点滴後 だいたい3000cc以上の尿を出さないとだめらしい
・・・・・ トイレで毎回自分のおしっこをビーカーに入れて測るなんて ちょっとうんざりだった ・・・・
それと 吐き気や倦怠感など 強烈に襲ってくるので
抗がん剤の前に まず吐き気止めの点滴を打たれた カイトリルとデカドロン
それから シスプラチンが80mg入った点滴を打って
その後も 夜までずーと水分の点滴が続いた
利尿剤も入っていたためか はじめは順調におしっこが出た
それに吐き気止めの点滴が良く効いて 吐き気が薄らぎ
それまで何にも食べる気もしなかったのに
イチゴとか少し口にできて 何だか軽く副作用を乗り超えられるような気がしてきた
看護師さんに「シスプラチンの副作用が現れるのは 点滴の翌日からよ」と言われても
その時は もしかしたら私は副作用が軽いかも~! なんて楽観してた
――― 今思えば かなり考えがあまかった
はじめはそんな調子の私だったけど
母は心配して その日は病室に泊ってくれていた
案の定 私の希望的観測はあっさり崩れて
最初の副作用は その日の夜襲ってきた
寝る前に歯を磨こうと 歯ブラシを口の中に入れた途端
突然 ものすごい嘔吐がきて 便器を抱えて動けなくなった
息ができないほどの 嘔吐の連続
止まらない嘔吐で 顔じゅうなま汗と涙で ぐちゃぐちゃになって
「・・・ママ」って 呼ぶのも必至で
呼ばれた母は
そんな私の姿を見て すこしオロオロしながら
とにかく私の背中を何度も何度もさすってくれて―――
しばらくして だんだん母の手のぬくもりが背中に伝わり
体じゅうが 「吐く」という状態に固まっていたのが じわじわ緩んできた
そうしたら不思議なことに だんだん嘔吐がおさまって ゆっくり息ができるようになった
その後も 強烈な嘔吐の時はいつも母が背中をさすってくれるとおさまった
母の手は 魔法の手だ
こんなことから始まって
その後 本格的なシスプラチンの副作用に 心身ともに叩きのめされることになる
あぁ恐るべし
☆いっこ☆