コラム

暴力を振るう夫から逃げる方法はありますか?

夫から暴力をふるわれています。怖くて逃げだしたいのですが、探し出されてもっとひどい暴力を受けるのではないか、実家や親族に迷惑をかけるのではないかと心配で逃げられません。いったい、どうすればいいでしょうか。

郷田 真樹 先生
愛媛県出身。愛媛大学法文学部卒業、九州大学大学院法学府修士課程修了(基礎法学)。民間企業勤務を経て、2000年から当事務所に入所。53期。
女性の権利に関する問題、医療過誤(患者側)、労働問題(労働者側)、薬害C型肝炎訴訟に主に関わってきた。仕事を通じて、「どんな時でも、どんな人でも、ふたたび歩き始める力がある」という思いを強くしている。最近のお気に入りは、福岡ハカセの『動的平衡』。

 


DVのある家庭から逃げたいときは、地方裁判所から保護命令という命令を出してもらえる場合があります。

いわゆるDV(配偶者暴力)の被害にあわれているのですね。
DVのある家庭から逃げて夫と離婚をしたいけれども、夫に探し出されてまた暴力をふるわれる可能性が高いような場合には、地方裁判所から保護命令という命令を出してもらえる場合があります。
保護命令には、6カ月間の妻・妻が連れて逃げている子ども・妻の親族などに対する接近禁止、2カ月間の夫の自宅からの退去(着の身着のまま逃げた妻が荷物を取りに戻るための期間です)、無言電話などの迷惑行為の禁止などいくつかの種類があり、その方の状況や必要性に応じて種類を選んで申立てができます。
保護命令が発令されたにもかかわらず、夫がこれに違反をしたような場合には、保護命令違反として警察が夫を逮捕することも可能です。
もっとも逮捕を伴いうる強い効力のある命令ですので、発令をしてもらうためには、各命令ごとに細かな要件があります。申立てをしたのに発令がされなかった場合には、夫が「自分の行為はDVではなかった」と暴力行為を正当化してくる心配もありますので、申立てを検討される場合には、必ず事前に専門家に相談をされることをお勧めします。経済的な理由から相談が難しい場合には、『法テラス』などの司法支援制度もありますので利用をご検討ください。
なお、保護命令の申立てをすると、夫婦間の対立は決定的なものになりがちですので、円満解決や同居の継続をご希望されている方は、利用すべきか否かについて、慎重に検討・相談をしてください。
この回答では、ご質問内容にあわせて「妻」「夫」とう表記をしましたが、保護命令制度は、性別・国籍を問わず利用できますし、内縁関係の方であっても利用ができます。
どんな理由があったとしても、暴力は犯罪であり、人権を侵害する行為です。暴力に負けず、勇気をもって一歩をふみだして、本来のあなたらしい人生を取り戻してくださいね。

 

女性協同法律事務所
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「女性による女性のための法律事務所・女性の権利のための法律センター」を目標に、1989年に事務所を設立。現在では11名の女性弁護士が在籍している。相談者は圧倒的に女性。離婚事件が多く、相続などを含めると約6割が家事事件。つづいて破産・負債整理、セクシュアル・ハラスメントを含む労働事件、少年事件・刑事事件、性暴力や医療過誤、交通事故や学校事故などの損害賠償請求事件、通常の契約をめぐる事件など。法人のメリットをいかし、長期間にわたって「お一人様の老後」の世話をする成年後見の業務にも携わる。

 

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