
先日、父が急に他界しました。父には遺産が1200万円あったのですが、私の父と母は法律上は結婚しておらず、父には法律上の妻(Aさん)と子(Bさん)が別にいます。また、父は遺言などは残していません。最近、このような事案の相続について民法の改正があったと聞いたのですが、どうなるのでしょうか。


原田 純子 先生
広島大学生物生産学部卒業。同大学院生物圏科学研究科中途退学後、2005年九州大学法科大学院入学。2008年司法試験合格、2009年12月より当事務所に入所。手先を使った細かい作業が好きで、ネイルアートや編みぐるみにはまったことも。食べ物では、麺類とチョコレート、果物、ワインが好き。

民法の規定が改正され、法律上の夫婦の子であっても、婚姻関係にない男女の間に生まれた子であっても、等しく相続権を持てるようになりました。
結論から言いますと、お父様の遺産は、Aさんが2分の1(600万円)、あなたとBさんが4分の1(300万円)ずつそれぞれ相続することになります。
これまでは、Aさんが2分の1(600万円)、Bさんが3分の1(400万円)で、あなたが6分の1(200万円)というのが民法の規定でした。つまり、あなたはBさんの半分しか相続の権利がなかったのですが、今年の9月、最高裁判所がこのような民法の規定を、平等を定める憲法に違反すると判断しました。それを受けて、12月5日に、上記民法の規定が改正され、法律上の夫婦の子であっても、婚姻関係にない男女の間に生まれた子であっても、等しく相続権を持つというようになりました。ですから、あなたとBさんは、それぞれ300万円ずつ、お父様の遺産を相続できることになります。
最高裁判所の判断に対しては、「法律婚を守る」という立場からは反対の意見もあったようですが、親が法律上結婚しているかいないかによって子どもの権利が侵害されることがあってはなりません。子どもは親を選んで産まれてくることはできないからです。最高裁判所の判断は、人は生まれによって差別されることがあってはならないという憲法の原則に適ったものだったと思います。
なお、今回の民法改正以前に被相続人が死亡した場合でも、それが平成13年7月以降であれば、この新しい民法のとおり、平等な相続権を主張できる場合があります。
このほかにも、日本の民法には、選択的夫婦別姓を認めていないこと、婚姻年齢が男女で違うこと、女性のみ6か月の再婚禁止期間があることなど、様々な問題点があり、国連の女性差別撤廃委員会からも、是正するよう何度も求められています。この機会に、これらの民法改正も速やかに進んでいくことを願っています。
女性協同法律事務所
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「女性による女性のための法律事務所・女性の権利のための法律センター」を目標に、1989年に事務所を設立。現在では11名の女性弁護士が在籍している。相談者は圧倒的に女性。離婚事件が多く、相続などを含めると約6割が家事事件。つづいて破産・負債整理、セクシュアル・ハラスメントを含む労働事件、少年事件・刑事事件、性暴力や医療過誤、交通事故や学校事故などの損害賠償請求事件、通常の契約をめぐる事件など。法人のメリットをいかし、長期間にわたって「お一人様の老後」の世話をする成年後見の業務にも携わる。