芹澤 数雄(せりざわ かずお)先生
福岡大学 経済学部 教授
静岡県生まれ。専門は金融論、経済哲学。一橋大学大学院 経済学研究科 博士課程修了後、福岡大学経済学部 経済学科の教授に就任。経済学、科学、哲学を総体的に捉えるための講義を学生に行う。日本経済学会、ファイナンス学会、金融学会所属。
本当の自分、本当の情報はどこにある?物事の本質を捉える力をつけよう。
自分らしい考えを持っていたいのに、「自分がどう思うか」よりも「人にどう思われたいか」「周りの評価はどうか」などに意識が傾いてしまうことはないだろうか。「自分自身を問う、本質を知る」ことの大切さを経済学の観点から伝えている、芹澤数雄先生。そのポイントについて話を聞いた。
全体を捉え、自分で物事を考えることが必要
「経済という言葉は、『経世済民』の略です。これは、世を治めて人々を救うことを意味しています。利潤や合理性を追求するのが経済学と思われがちですが、互いを大切にし、発展することこそが根底にあるのです。物事の本質を知るには、視野を広く持つことが大切です。私の専門の経済学も、経済学のみが独立して存在するのではありません。経済学は社会科学の一部です。また、その社会科学も自然科学から枝分かれしたものです。そう考えると経済学は根幹である科学と切り離せないのが分かります。学問全体を吟味しないと、専門的な学びも深められません」。
部分的なものだけを見ていると視野が狭くなり、学びも自己満足にとどまってしまう。そうならないために、全体を見通して考える習慣を持つことが大切だ。しかし、その考える行為そのものができていない人が多いと、芹澤先生は言う。
「思い込み」から自由になる。
「自分の意思だと思っていても、実は私たちの考えや行動には、『潜在意識』が強く働いています。例えば、決して経験したことがないのに自分の死を恐れる人がいるのは、心の奥底にある苦しい・怖いなどのイメージに思考が左右されているからです」。
無意識に潜在意識に左右されるからこそ、自分が見た、聞いたことについて、本当にそうなのか立ち止まって考える必要がある。外部からの伝聞を鵜呑みにしていると情報が限定され、それが誤った「思い込み」を生むことにつながる。
「例えば『外車はかっこいい』『結婚相手は容姿端麗な人がいい』。これらはどこに価値を見出しているでしょうか。自分で本当の価値を考えずに、周囲からどう見られたいかが重要になっている。そのうち他人と比較することで優越感を得たり、考えや行動が自分中心になってしまうことがあるかもしれません。そうならないために冷静に自分の考えを導くことが大切です」。
合理性や効率を重視する今の世の中の流れは残念ながら急には変わらない。しかし、物事を俯瞰して全体を捉え、自分の問題として考えていけば、自らの行動に納得し充足感が得られるのではないだろうか。アヴァンティゼミでは、身近な事例などをもとに、当たり前すぎて疑問を抱くことがない「考える」ことについて問う。そうして「考える力」を鍛え、自分を縛っている概念や価値観から自由になることを学ぼう。