キャリアも夫婦の役割も常識にとらわれないグループ初の女性総支配人
この8月、ANAクラウンプラザホテル福岡に女性の総支配人が着任した。国内グループホテル初の女性総支配人で、しかも40代前半という若さで異例の抜擢だ。キャリアはホテル一筋かと思ったら、「10年はシステム会社にいたんです」と柔らかい笑顔で話す原めぐみさん。凛としていながら親しみやすい雰囲気だ。
ホテルからシステム業へ転身
ホテル業界に憧れを抱いたのは、高校生のとき。夏休みにアメリカへ短期留学した際、「一流ホテルで大人扱いしてもらい、ホテルってすごいと魅了されました」。ホテル専門学校を卒業し、1年間はオーストラリアのホテルで働いた。
帰国すると、恩師のアドバイスに従い、憧れのヒルトン東京に直接アタック。履歴書を送って面接にこぎつけると、「来週から働けますか」と即採用に。フロントから始めて夜勤も経験。「ホテルマンやビジネスマンとしてのセンスをここでみっちり学びました」。
そんな原さんにも迷いの時期があった。27歳の頃、この先どう歩むか考えた末、ホテル業界向けシステムの会社へ転職。「ホテルをまた違う側面から学べると考えたんです」。今でこそ業界最大手だが、当時は10人程度の小さな会社。システムのトレーナーとなり、雑用や社長秘書まで何でも担当して働いた。
結婚のため一時仕事を離れていた原さんに、大きなプロジェックトの話が舞い込んだのは30代前半のこと。IHG・ANA・ホテルズグループにシステムを導入するプロジェクトを任されたのだ。そして導入後はホテル側から運用を担当してほしいと請われ、両社と原さん本人合意の上で、2007年に同グループへ入社。IT担当部長、テクノロジー統括部長へと順調に昇格した。
ホテルの運営は人が重要
数年後、「ホテルの総支配人になってほしい」と打診された。業績と人柄、語学力を評価されたのだ。しかし「実は最初、いえいえとお断わりしたんです。幹部会で、女性マネージャーの育成が課題となっていたので、その必要性は頭ではわかっていました。でも、自分となると戸惑ってしまって…」と打ち明ける。
だが、世界各地のリーダー候補者とリーダーシップやメンタルのトレーニングを受講し、東京と神戸の副総支配人を経て、ついに福岡で総支配人に就任。赴任には夫を伴い、現在は夫が家事を担っている。「夫はもともとバリバリ仕事をしていましたが、今は気楽でいいみたいですよ。私は会食が多くて、ご飯がいらないなら早く言ってと叱られたりします」と新しい夫婦の在り方も自然体で楽しんでいる。
福岡に来て2週間。「福岡は活気があり、女性がいきいきと働き輝いていますね。ホテルの設備は整っているので、ソフト面を打ち出しお客様に喜んでいただけるように力を尽くしたい」と抱負を語る。
長くIT分野に身を置いてきた原さん。だからこそ “人” を大切にしているのだそう。「どんなにいいテクノロジーがあっても、使う人がスマートでなければ活かせない。人がモノに魂を吹き込むのですから。ホテルも人が作っていくものだと考えています」。ある社員は「さっそく新しい風が吹いていてワクワクします」と大歓迎の様子。原さんの手腕でホテルがどう変わるか大いに期待したい。
『ANAクラウンプラザホテル福岡』 総支配人
原 めぐみさん
1973年東京都出身、日本ホテルスクール卒業。オーストラリアのホテル、ヒルトン東京を経て、マイクロス-フィデリオジャパン株式会社に転職、ホテルシステムのコンサルタント等を務める。2007年IHG・ANA・ホテルズグループジャパンへ入社、IT担当部長、ANAインターコンチネンタルホテル東京とANAクラウンプラザホテル神戸の副総支配人を経て現職。