自分らしく生きるための抗がん薬治療|患者が少しでも元の生活を取り戻せる副作用の少ない抗がん薬治療をめざして
今月は、がん専門薬剤師として、病院のベッドサイドや大学の教壇で活躍される松尾宏一先生に、抗がん薬治療についてお話をうかがった。
最近、歌舞伎俳優・市川海老蔵さんの妻、小林麻央さんが自らのがんが末期がんであることを明かしたばかり。余命を伸ばすというよりは、QOL(クオリティ・オブ・ライフ:生活の質)を高める治療法を選び、子どもたちと外出している様子などがブログでつづられるようになった。彼女らしい笑顔を見て、少しほっとした人も多いのではないだろうか。
松尾先生の仕事も、患者が“自分らしく生きる”ための抗がん薬治療が最大のミッション。がん専門薬剤師は、患者の気持ちを第一に重視し、少しでも元の生活に近づけるよう、副作用のできるだけ軽いがん薬治療が行なえるように医師に助言する。例えば、子どもが小さく、家事もしなければならない人には、手にしびれが残らない薬を提案する。娘の結婚式を控えていて、髪の毛が抜ける嫌だという人には、毛髪に影響しない薬を考えるという。効果が少し弱まったとしても、患者本位の選択ならそれは最善の治療になるだろう。
「抗がん薬は、副作用が出るのが前提。大切なのは患者が心構えを決められるよう、しっかり説明すること」と松尾先生はいう。
日本人の2人に1人ががんになる現代。11月のアヴァンティ・ゼミは、万が一、自分や家族など近しい人ががんになった時に羅針盤となる抗がん薬治療の核心に触れることができるはずだ。
薬剤師 博士(薬学)・福岡大学 薬学部 実務薬剤学教室 准教授・福岡大学筑紫病院 薬剤部 副薬剤部長
松尾 宏一先生
1987年3月 福岡大学 薬学部卒業。同年、4月から九州中央病院に勤務。副薬剤部長などを経て、2013年4月に福岡大学に准教授として着任。15年4月から福岡大学 筑紫病院 副薬剤部長を兼務。現在に至る。2012年3月福岡大学 薬学研究科 博士 修了。研究テーマは医療薬学、医薬品の適正使用。