インタビュー

権頭 喜美惠さん/お互いさまで笑顔がいっぱいの世界を広げる

お互いさまで笑顔がいっぱいの世界を広げる

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家事、育児、仕事にフル回転 今できることに心を込めて

子どもの頃の夢は、身近な人を助けられる医師になること。家庭の経済状況は苦しかったが、奨学金やアルバイトで大学に進学した。そこで夫と出会い、学生結婚。在学中に出産し、先生や友人、近所の人たちに支えられながら学業と育児、バイトを両立させ卒業した。「周囲の人に支えられながら送った学生時代の経験は、今に活かされています」と語る。

岡山育ちの権頭喜美惠さんは、勤務医だった夫の転勤で北九州に来た。27歳の頃は北九州で暮らし始めて2年目、3人の子育て中だった。母親を早くに亡くし、夫は仕事で忙しく、見知らぬ土地で友達もいない。「社会から隔離されているような感じ…。自分の描いていた理想とは全く違いましたね」と静かに語る。若い頃から「人の役に立つ仕事がしたい」という想いが強く、働いていないことに焦りもあった。それでも、愛おしい子どもたちの成長は傍で見守りたい。そんな矢先、非常勤講師の職を見つけ、社会への一歩を踏み出す。家事、育児、仕事にフル回転、今できることにベストを尽くした。

高齢者福祉事業を通してオープンで温かい居場所をつくる

行政の子育て支援、公共施設や遊び場が充実している北九州は暮らしやすかった。転勤せずここに住み続けたいと思った権頭さんは、夫に開業を提案。資金も縁故もないところから内科クリニックを開設し、運営にも携わった。受付に立ち、地域の人たちと関わっていく中で、「皆さんともっと深く長くお付き合いしたい」という気持ちが芽生え、介護事業に関心を持つようになった。

程なくして介護事業を始めるために大学に編入。福祉を学び、グループホーム、通所介護、特養など次々と事業を展開し、在宅医療に取り組む夫とともに地域包括ケアの仕組みを構築していった。

権頭さんが目指すのは、入居者が地域の一員として生きていける環境。社会から隔離された場所ではなく、いろいろな人と自然に交流できるコミュニティだ。施設内にあるラジオ局のサテライトスタジオも、多様な人が出入りする環境の一つ。カフェを併設し、地域の人が参加できる講座やマルシェも開いている。

「誰が来ても心地よい居場所、〟お互いさまで笑顔がいっぱい〝を目指しています。振り返ってみると、目の前のことを一生懸命やってきたことが今につながってきました。無駄な経験はなくて、全部大切なことなんだと思います」。

『『社会福祉法人もやい聖友会』 理事長』
権頭 喜美惠さん

1963年兵庫県生まれ、岡山県育ち。中学校で理科の非常勤講師をしながら4人の子を育て、『権頭クリニック』開設後は講師業の傍ら経営にも携わる。2003年より福祉事業に力を注ぎ、2011年『社会福祉法人もやい聖友会』理事長に就任。現在は関連3法人21事業所を経営しながら「地域包括ケア」の構築を目指した活動を行う。

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