インタビュー

五十君 麻里子先生/私法の元祖、ローマ法を知ろう。古代ローマ社会から今の日本を眺めると?

五十君 麻里子先生
九州大学 法学研究院 基礎法学部門 教授
(今は無き)大名小学校、舞鶴中学校、修猷館、九州大学法学部卒業。九州大学大学院在学中、ドイツ、イタリア、イギリスの各国に留学。専門のローマ法研究・教育の傍ら、我国唯一の英語のみで修士(法学)を取得できるLL.M.コースでも教える。福岡県労働委員会公益委員。二人の娘の母。

古代ローマからみた日本
私法の元祖、ローマ法を知ろう。古代ローマ社会から今の日本を眺めると?

今月はローマ法が専門の五十君先生を訪ねた。ローマ法は、現在の法律を解釈する上でもいまだにその成り立ちを辿って参考にされる、私法・国際法の原点であり、元祖のような存在だ。

ローマ法や当時の社会事情に詳しい先生の目からみた、今の日本社会のとらえ方が面白い。

例えば「日本の終身雇用制度はローマの奴隷制度に似ている」という見方。「当時の主人は、奴隷たちを人格込みで養い、縁組や病気の世話など生活の面倒も見ていました。労働力を維持しようと思えば虐待なんて非効率なこともしません。ここが日本の丁稚奉公に見る徒弟制度や、従業員の幸福を願い、生活や時には人生の面倒まで見ようとする日本の中小企業経営者と似ているのです。

また、当時ローマで自由人と呼ばれた市民たちは、自由な反面、貧困に陥ったり、病気になっても社会保障的な制度は一切なく、つらい生活を強いられる市民も多かった。これって今のブラック労働みたいなものです」。

ローマというフィルターを通して、日本の社会が違った景色で見えてくる。今回のゼミでは、古代ローマの社会や法律のことを今の日本と重ね合わせながら紹介。先生はローマ法の研究をする傍ら、世界中から留学生を受け入れてグローバルロイヤーを育てることにも力を入れているので、古代ローマ好きも、法律のなりたちや最新の法律事情に興味がある人もどうぞ。

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