佐々木 久美子さん
『株式会社グルーヴノーツ』 代表取締役会長
福岡県生まれ。システムエンジニア、プロジェクトマネージャー(PM)等を経て、2000年(株)アイキューブドシステムズに入社。交通系、医療系Webシステムやクラウド、スマホを利用したサービスの開発を行う。2011年『(株)クリップエンターテイメント』設立を経て『(株)グルーヴノーツ』代表取締役会長に就任。食、カメラ、アニメ、漫画とゲーム好き。
人を意識しない、比べない我が道を自分らしく行くから楽しくなる
この笑顔で “本性” は、かなりとんがったIT技術者。5年前に起業し、経営者として自在な発想力と行動力を発揮している。
問題意識が着想のタネ
小学生のころ、父が買ってきたパソコンでプログラミングしたのが技術者になるきっかけに。27歳の時、1回転職し、2社を経験した。福岡の女性システムエンジニアとしてキャリアの長さも際立っている。相談相手も競争相手もずっと男性だった。「自分が女性だと意識することもなかったですね。評価に不服がある時は、すぐ上司に直訴していましたし」。
佐々木さんに火をつけるのはいつも「なんで?」という問題意識だ。「テクノロジーも問題を解決するためのもの。問題意識が何を作りたいのか、発想力を触発します。開発はクリエイティブな仕事だから人を意識しないし、人と比べることもない。オリジナリティを追求できるところが掛け値なしに楽しい」。
社員時代、プロジェクトリーダーとして手がけた案件に、西鉄のバスロケーションシステムがある。バスの到着予定時間がわかる、あの便利なシステムだ。バスから発信される現在位置などの大量のデータのアクセスをさばき、瞬時に分析できるというものだ。
この技術は現在も様々なモノに通信機能を持たせるIoT(モノのインターネット化)技術として進化中で、同社の特化分野でもある。
会社のルールも自由発想で
今年4月、「西鉄天神CLASS」の3階にオフィスを移転したのも、西鉄との仕事が縁。3階はオフィス、テックパークメイカーズ、テックパークキッズの3つのゾーンに分かれ、とくに学童保育であるテックパークキッズは、子ども達がそれぞれの個性に合わせてテクノロジーを楽しめる点で注目を集めている。「お母さんが子どもを迎えに行った時は宿題も食事もお風呂もすんでいて、帰ったら寝かせるだけという理想の状態も可能にしています」。
佐々木さんが学童保育機能を追求した背景には、自身が働くママとしてハンディを抱えてきたことがある。二児の母で離婚歴2回。長男は7歳でまだまだ手のかかるお年頃だ。「私の場合は両親が子どもの面倒を見てくれたから仕事を続けられましたが、それでも時間が足りない。起業を決断できたのも “自分が会社をやれば子どもを育てながらでも時間が自由になるんじゃない” というアドバイスが決め手になったくらい。今も時間はないですけど」。
同社では、この学童保育の社員活用を促す計画。仕事と子育て、介護などの両立のために在宅勤務も実現している。「社員は社業に協力してくれているのだから、会社は社員にもっとコミットすべき」と考えている。雑誌に出てくるようなオフィス空間にまかないご飯を作ったり、お酒を飲めるバーカウンターがどんと設置されているのも、その表れだろう。
とんがった技術魂の隣に社員を想い、家族を思う母性愛が息づくリーダーである。クールで熱く深いその内懐で優秀な技術者を育てながら、同社は世界的IT企業としての地平を目指す。