カルチャーファイル

今月は、山海塾「降りくるもののなかで −とばり」公演発表記者会見をレポートします!

圧倒的な芸術を前に自分と向き合う時間。舞踏の世界ー

1975年、天児牛大氏によって設立された「山海塾」は、設立以来、世界45カ国、700を超える都市で公演してきました。白塗りの舞踏、この世のものとは思えない幻想的なステージ、音楽、舞台美術、衣裳に至るまですべてが独特でオリジナル。他に類を見ない山海塾のパフォーマンスは世界中で賞賛を集めています。

今回上演が決定した「降りくるもののなかで―とばり」は星からインスピレーションを受けた作品で、2008年5月パリで初演後、同9月に北九州芸術劇場で共同プロデュース作品として日本初公演、現在までに、欧州、北米、南米、中東、アジアの12カ国29都市で公演を重ね、北九州芸術劇場では9年振り2度目の上演となります。再演に先駆け、記者会見で天児牛大氏が語った制作エピソードを紹介します。

img1702_culture2new(C)Sankai Juku

#カルチャー#芸術#舞台
3月19日(日)北九州芸術劇場 公演情報はこちら

舞台の星は8月、日本の上空

制作を始めたのが夏だったこともあり、舞台は日本の夏の空となりました。
「今」見上げている星は我々が認知するまでに、想像もできないような悠久の時を経てこちらに届いています。それでも、我々が「今」と認識してしまう誤差や隔たりがあります。農耕の暮らしから、星を見上げ、そこに動物を見つけるなど、星座を見つける行為で、人の暮らしは楽になったのではないかと思います。記憶にはりついている風景や、若いころに出合った「美しい星」という本からもインスパイアされています。

創作プロセスから既に作品

踊り手は踊るだけではなく、舞台美術などの製作過程から関わっています。舞台の星空は、踊り手が穴を穿った暗幕に後方から光を当てています。作り上げていく中で、星の数は自ずと決まっていきました。星はランダムに配置されたものではなく、8月の日本の空を正確に模ったものです。後方から6,600個の星々の光、舞台上の楕円内には2,200個、舞台を作り上げていく中で、星の数は自ずと決まっていきました。

音楽との関係

音楽に関しても、稽古をはじめてから音楽家との対話のなかで生まれていきます。長い間ずっと同じ音楽家と創作しています。

観客それぞれが出会う「舞台」

「とばり」とは、元来薄い布のことで、昼から夜への帳といった表現が転じて、空間を仕切るもの、夜と昼の境目という意味に。「過去のひとつの時間に包まれている現在」この作品は、そんな詩的な断片を7つの場面でつないでいます。解釈は、個々の受け手によって違っていいと思っています。よい感情、悪い感情、その時々に持っている刹那的な感情を、舞台を前にして感じてくれればと思います。

初演から9年、再解釈はありません

作品としての再解釈はありません。作品そのものは初演までに作り上げていくものであって、即興性は舞台に持ち込みません。良い舞台は、変化してよい質のものではないと思っています。袖幕との距離や空間に対する踊り手の立ち位置に関してなど、許容範囲内の異なりは受け入れますが、それはとても狭いものです。

創作のとき、気をつけていること

創作のときは大雑把なデザインより、ディテールから入ります。ディテールを積み上げていく方向がいいと自分では思います。常に「基本」に戻ることを意識していて、異なったことをやろう、違ったバリエーションでトライしようとは考えません。

水平と垂直(リラクゼーションとテンション)。重力との対話

ここでいう「基本」とは、水平と垂直、自動と他動への意識です。山海塾では鏡を見て練習するということがありません。自分の意思によって動く(自動)/意識を抜いた状態(他動)という二つの究極があって、力を抜いた状態=リラクゼーションからテンションを入れていくということをベースに考えています。力を抜いた状態を舞踏に取り入れたいと思っています。

協力/北九州芸術劇場

その洗練された立ち居振る舞いから、既に作品を見ているような感動を覚えた記者会見でした。
白塗り剃髪で独自の表現形態を確立した山海塾の舞台が、こんなにも人々を魅了するのはなぜでしょうか。研ぎ澄まされた芸術を前にすると、私たちが生活の中で普段感じないようにしている曖昧さや不確かなものを、目の当たりにしてしまうからかもしれません。それは美しいこともあるし、醜いこともありますが、深い闇と光の瞬きの中に積み重ねられていく舞踏を前に、自身の中に確実に芽生えていく何かを感じることと思います。幻想的な星空に包まれている舞台で展開する、圧倒的な芸術をお楽しみください。
3月19日は、公演後に天児牛大によるポストパフォーマンストークもあります。是非劇場へ足をお運びください!

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天児 牛大さん
山海塾主宰。1975年、舞踏カンパニー「山海塾」を設立。山海塾の作品は、全作品の振付・演出、空間、衣裳デザインに至るまで総合的に天児牛大が創作している。山海塾以外にも国内外で多くの作品を手掛け、国際振付コンクール等にて審査委員長を務めるなど、その功績は世界各国で極めて高い評価を得ている。2011年に紫綬褒章受賞、2013年に山海塾として国際交流基金賞を受賞、2014年にはフランス政府より芸術文化勲章(コマンドール章)を受賞している。

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山海塾 SANKAI JUKU
世界のコンテンポラリーダンスの最高峰であるパリ市立劇場(THÉÂTRE DE LA VILLE, PARIS)を創作活動の本拠地として、およそ2年に1度のペースで新作を発表し続けている。厳しく作品の質を問う同劇場が、25年以上にも渡り共同プロデュース形式で創作を支援し続けているカンパニーは、世界でもわずかしか存在しない。

公演情報

山海塾『降りくるもののなかで-とばり』

演出・振付・デザイン/天児牛大
音楽/加古隆、YAS-KAZ、吉川洋一郎
舞踏手/天児牛大、蟬丸、竹内晶、市原昭仁、長谷川一郎、松岡大、石井則仁、百木俊介


日時/3月19日(日) 14:00開演(13:30開場)
※天児牛大によるポストパフォーマンストークあり
会場/北九州芸術劇場・中劇場
全席指定/前売4,500円/ユース(24歳以下・要身分証提示)2,500円/高校生〔的〕チケット(劇場窓口・前売のみ取扱)1,500円
※未就学のお子様はご入場できません
一般発売開始/2017年1月22日(日) 10:00~
主催/北九州芸術劇場
問合せ・詳細/北九州芸術劇場
TEL 093-562-2655
WEB http://www.kitakyushu-performingartscenter.or.jp/event/2016/0319sankaijuku.html

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