働く限り、ストレスとは無縁ではいられない。
上司、同僚、部下、取引先。ストレス耐性が強いつもりでも、時には蓄積した原因で疲れ切ってしまうことも。仕事のストレス、あなたはどうしてますか?
ストレスの強さを5段階で言うとどのくらいですか?

仕事のストレスの原因は何ですか?(複数回答)

アヴァンティ働く女性研究所の登録者約2000人にSNS等で呼びかけ、回答を得た。回答期間は6月5日〜6月23日。有効回答数94。回答者は23歳〜65歳までで平均年齢は41.8歳。
「これじゃ目標を達成できないだろ!」上司の大きな声がオフィスに響き渡った。
「申し訳ありませんっ」
怒鳴られた男性は委縮して、ずっと下を向いている。オフィスは一気にピリピリした雰囲気に。営業事務のリナさん(23)は、「またか」とうんざりしつつも、平静を装ってパソコン作業を続けた。
リナさんはメーカーに入社して2年目。50代の男性上司はいつも、営業の男性社員たちを大声で叱責する。その度に職場の空気は重くなり、上司のイライラが伝わってきて周りのみんなが気を遣う。
「職場の雰囲気が悪くなることが、私にとって一番嫌なんです」
リナさんは内勤だから職場からは逃げようがない。今は幸い、終礼後はすぐ帰れるので、さほどストレスを溜めずに済んでいるが。
「彼氏は? 結婚は?」営業先の軽口にうんざり
営業職になって5年のマリさん(30)の場合は、営業先の男性たちのソフトセクハラが最大のストレス要因になっている。
「マリさん、いくつ? 結婚してるの? 彼氏はいるんでしょう?」営業先の男性にこう、軽く、あいさつ感覚で聞かれる。
「いえいえー、いないんですよぉ。仕事ばかりですから」
「ホントに!? 理想が高くて、選り好みしてるんでしょう?」
「そんなことないんですけどね。いい人がいたら紹介してください」
精一杯の作り笑顔で応じる。「だから何? あなたに関係ないでしょ」と言いたいのをぐっとこらえて。
営業先は男性が多い。2回目以降の訪問で、私生活に探りを入れてくる彼らにげんなりする。会話の流れはいつも同じ。商談はまとまっても、「またか」と傷つき、将来への不安と焦りを募らせる。
「悪気はないと分かってはいるのですが……。私が傷ついているなんて誰も知らないんでしょうね」
最近はとにかく話を右から左へ聞き流すように心がけている。

部下のタメ口にイラッ聞きたくない上司の陰口
中間管理職ともなると、ストレス要因は一つとは限らない。上司と部下の両方に悩まされているのが、課長のカオリさん(41)だ。
50代の女性部長のもとに、部内最年少のレイカさん(31)がつかつかと歩み寄った。
「ねえ、それ急ぐ? こっちは急ぐのあるんだけど」
タメ口で聞く。部長はちょうど、他部署に頼まれた急ぎの資料を作っていた。「これは至急だから、集中させて」と断ると思いきや、部長はあっさり「あ、いいよ」。レイカさんに頼まれた仕事を手伝った。
部署の8人中7人が女性という「女の園」で、問題の一つがレイカさんのタメ口だ。「これさぁ、こっちのほうが良くない?」などと業務改善を提案してきたり、別の意見を出すと猛烈にタメ口で否定してきたり。「本人は自分がタメ口という自覚がなくて、ほんとイラッとします」
もう一つの問題が部長だ。前部長は、上下関係も仕事の分担もはっきりしていたが、現部長は全てあいまい。みんな仲良しのつもりなのか。タメ口での提案も、他部署の無理な業務も、何でも受け入れる。そのせいで残業が増えたと、部長や他部署の陰口がひどい。
この時も部長は、レイカさんに頼まれた業務をすぐに片付けた後で、「あとはどれをしたらいい?」と進んで手伝う始末。しばらくして「資料はまだか」と催促の電話が入り、慌てて手伝いを止めて資料作りに戻った。一部始終を見ていた部下たちはひそひそと、「部長、またやりっ放しだよ」「いつも何の資料作ってるの?」と言い合った。
「陰口を聞くのもストレスです」

フリーの不安「来年は?」経験積み自信がついた
上司や部下に悩むのは組織内で働くがゆえ。フリーランスの場合はまた違ったストレスがある。
臨床心理士のユキコさん(40)は、将来への不安が最大のストレスだった。1年更新だった30代は、「来年はどうなるんだろう。今の仕事を更新してもらえるのかな」と思っていた。スクールカウンセラーや専門学校の講師、知り合いのサロンの手伝いなど、いずれも不安定な立場。仕事で感じよく振舞おうと努めるあまり、家ではぐったりしていた。「今思えば、自分のケアまで手が回らず、プライベートは不機嫌でした」
だが働き始めて16年。経験を積むことで自信がつき、今は常勤ではないストレスはかなり減った。
仕事柄、ストレスとの付き合い方についての知識は多い。もともと耐性も高い。解消法は、家庭菜園に水やりしたり、月を眺めたりすること。「自分も自然や宇宙の一部だと感じられると、いつもと違う視点や時間の流れを意識できて気持ちが変わります」。家族との時間も大事だ。「子どもと過ごす時間や旅も、私にはかなり効果的です」
前述のカオリさんは、ストレスを感じたら深呼吸して、第三者の立場で考え、落ち着くように心がけているという。ストレスとの付き合い方は人それぞれ。自分なりの上手な対処法を体得することは、働く大人の必須科目かもしれない。
