三姉妹の長女として生まれた安重奈津代さん。ダスキン加盟店を経営する家業については、30代半ばで手伝うようになるまで、事業内容を深く知らなかったという。そんな自分が跡継ぎとなることに悩み、決断には5年がかかった。
「厳格な父と一緒に働くことの難しさや、自分より年齢も経験も上の従業員の方が多い中、自分が代表になることを認めてもらえるのかという思いがありました」。自分自身も2人の娘を持つ母親であり、家業を手伝い始めた頃、次女はまだ1歳にもなっていなかった。「仕事をするのは家族の幸せのため」と思っていた奈津代さんにとって、仕事に向き合えば向き合うほど時間や気持ちを家族に割けなくなるのは葛藤だった。
「それでも、継承を受け入れたことで、人生の新しい扉が開いたように感じたんです。今は、親の築いた信用や人脈は無形の資産であり、それがあるのは大きなアドバンテージであると考えています」。業界や経営への関与が遅かった分、「少しでも周りに追いつかなくては」と成長するための努力を欠かさない。現在、女性リーダーを育成する大学院のプログラムに参加。先代が築いた基盤に自らの持ち味を掛け合わせようと、職場の環境づくりに取り組んでいる。そして、経営者として目標のひとつは、2人の娘が「ママの会社を継いでもいいな」と自然と思えるような会社を作ること。「育児中やシニアの女性でも、生活とのバランスがとれて長く働けるような職場にしたいんです。娘が継ぐことになっても、もちろん結婚や出産も経験してほしいですから」。
継承した重責を背負いながら、家族や従業員への想いを語る奈津代さん。そのしなやかな眼差しが、これから多くの “跡継ぎ娘” たちが日本の社会を席巻していく、その礎となっていくのだろう。
『有限会社 興和 ダスキン志免』代表取締役
安重 奈津代さん
1968年生福岡県出身。ダスキンの加盟店として、1969年に祖父が『有限会社興和』を創業。父の代のとき、母の代わりとして自身も家業に携わるように。「金儲けのためでなく人の役に立つような経営を」「他人に対しては喜びのタネまきをすること」といったダスキンの経営理念に感銘を受け、43歳のときに三代目となることを決断。2011年代表取締役就任。パートを含む従業員数は約80名。
▲1.ダスキン創業50周年記念事業の九州地域大会に、従業員の皆さんと参加。
▲ 2.女性がひとりで抱えこみがちな “家事の悩み” に「お掃除おまかせサービス」や「家事おてつだいサービス」など、きめ細やかなメニューで対応している。
▲ 3.「宝物は家族」だと語る奈津代さん。「無条件に愛してくれる娘たち、そして公私にわたり支えてくれる夫に感謝しています」。
ダスキン志免
福岡県糟屋郡志免町吉原120-1
https://www.facebook.com/duskinshime
TEL/[Free]0120-35-2634
MAIL/duskin-shime@cello.ocn.ne.jp
営/9:00~17:00
休/土・日曜、祝日、年末年始、夏季休暇
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