前回、調停についてお話をしましたが、調停をしても、合意が成立せず、それでも離婚したいと考えるときには、どうしたらいいでしょうか。
こういう時には、離婚訴訟(離婚の裁判)を起こすことになります。
ちなみに、調停を申し立てずに最初から裁判を起こすことは原則としてできません。家庭内のことについては、まずは話し合いをすることが必要だとの考えから、法律は「調停前置主義」が原則となっているためです(もっとも、相手方が行方不明の場合など、調停が無意味であることが客観的に明らかといった場合には、最初から裁判を起こすことが認められることがあります)。
離婚訴訟は、夫か妻のいずれかの住所地の家庭裁判所で行います。
例えば東京で夫婦で生活していたが、妻が実家のある福岡に戻ってきている場合、夫が生活している東京家庭裁判所か、妻が生活している福岡家庭裁判所の何れかで、訴訟を行います。相手方の住所地で行う調停とは異なっています。
次に、手続きをご説明します。
「離婚する」という判決を求める側が「訴状」という書面を作成し、裁判所に提出することが必要です。
「離婚しない」ことを求める裁判を起こすことはできません。
この点も調停とは少し異なります。調停は話し合いの手続きですので、夫婦関係を調整し、やり直すための話し合いを求めて調停を起こすこともできるのですが、裁判は、「離婚を求める」裁判を起こし、裁判所がそれを認めるかどうかを審理する仕組みになっているのです。
訴状が提出されたあとはどのように進むでしょうか。
「訴状」を提出する人を「原告」と呼びます。
これに対して、裁判を起こされた側の人を「被告」と呼びます。これは刑事事件の「被告人」と似ていますが、全く別の手続きです
被告は、裁判所が定めた提出期限までに「答弁書」という訴状に対する反論や被告の言い分を記載した書面を裁判所に提出し、裁判所の呼び出す日に出頭することになります。
訴状が届いたのに、内容を読んで、被告が「あまりにばかばかしい」「こんな裁判に付き合うのも嫌だ」と思い、何も連絡せず、書類も提出しない場合にはどうなるでしょうか。
訴状が届いたのにも関わらず、何も反論せず、裁判の日にも出頭しない場合には、「被告は原告の主張を争わず、原告の求める判決を出されても構わないと考えているのだ」と裁判所は解釈することになっています。
訴状が届いたら、無視したりせず、きちんと対応することが必要です。
呼び出しの日の都合が悪い場合には、必ず裁判所に連絡しましょう。
修猷館高校、九州大学卒。44期。松坂法律事務所を経て1994年に現事務所に入所。弁護士登録以来、薬害HIV,薬害肝炎事件などの集団訴訟に携わりながら、子どもの権利に関する事件に一貫して関与している。特にセクシュアルハラスメント事件や性被害、DV被害の事件を多数手がける。 趣味は、図書館や美術館巡り、エレクトーンなど。あこがれの山登りや一人旅にも行きたいと考えている。
女性協同法律事務所
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女性協同法律事務所について
「女性による女性のための法律事務所・女性の権利のための法律センター」を目標に、1989年に事務所を設立。現在では11名の女性弁護士が在籍している。相談者は圧倒的に女性。離婚事件が多く、相続などを含めると約6割が家事事件。つづいて破産・負債整理、セクシュアル・ハラスメントを含む労働事件、少年事件・刑事事件、性暴力や医療過誤、交通事故や学校事故などの損害賠償請求事件、通常の契約をめぐる事件など。法人のメリットをいかし、長期間にわたって「お一人様の老後」の世話をする成年後見の業務にも携わる。