インタビュー

安藤 千英さん/人生に無駄はない。腹をくくったら、自分の進む道が見えた。

人生に無駄はない。腹をくくったら、自分の進む道が見えた。

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美しい色合いのスムージーに、ケーキ、ピザ。どれもが生の野菜やフルーツを使い、加熱しない「ローフード」という調理法で作られている。安藤千英さんの生み出す料理は、味はもちろん見た目の美しさにもこだわったもので、彼女のインスタグラムには、オリジナリティにあふれた美しいレシピが並ぶ。

メディアからの引き合いも多く、全国を飛び回る安藤さんだが、実はこの仕事を本格的に始めてまだ二年目。料理家人生は、人生最大といっても過言ではない危機が転機で始まった。

自分の道を模索していた専業主婦時代

21歳で結婚・出産し、専業主婦に。家事や育児をこなし、家族を送り出したら大好きな海外ドラマを見て楽しむという、傍目には安定した日々を送っていたが、友人たちが仕事に出て働き、遊び、と社会人生活を謳歌する姿に、内心焦りを感じていたという。

実家は料理屋で、母も祖母も働く女性だったため、自分が専業主婦であることにどこか違和感があったのだ。30代に入り、子どもに手がかからなくなるとその気持ちはさらに強くなった。フラワーアレンジメントに没頭して資格を取ってみるなど、道を模索する日々。
「もがき苦しんだ「自分探し」の時期でした」。

二女を出産、そして不慮の事故

38歳のとき二女を授かった。夫から3人目を望まれたとき、はじめはこの歳での子育てに不安を覚えたが、同世代のママ友が出産したことを聞くと考えが変わった。「今の家庭に赤ちゃんがいたら楽しいだろうな、と想像したら新しい世界が見えた気がしてワクワクしたんです」。

気持ちが決まると、すぐ子宝に恵まれ、家族5人の賑やかな生活が始まった。だが上2人を育てた20代の頃とは体力も違い、産後に手がこわばるなど、思いがけない症状も出て苦しみながらの育児だった。
「毎日泣いて、子どもにごめんねと謝っていました。高齢の母親で申し訳ないと」。

そんなある日、不慮の事故が起こる。2歳になる二女が全身に火傷を負ってしまったのだ。事故後1カ月半は生死をさまよう重症で、安藤さんは自分を責め、すべてを呪い、娘と死ぬしかないとまで思い詰めたが、留まらせたのは脳裏に浮かんだ赤ちゃんの頃の元気な娘の姿だった。
「娘を元気にする。絶対に体の傷をゼロにする」そう誓った。

ローフードとの出合い

事故の後、二女はご飯を食べなくなった。笑わないし、喋らない。「人間、食べたものでできているんだ、と当たり前のことに気付きました」。親が頑張って食べさせなければと、体にいいものを探すうちにローフードに出合う。

なかでもアメリカのローフードシェフ、マシュー・ケニー氏の洗練された料理を本で見て衝撃を受けた。野菜の色や美しさを一皿の中に表現した料理のとりこに。元々ハマると集中して徹底的にやり抜く性格だ。
わずか1カ月でローフードの資格を取り、講師の試験にも合格。自身も体が変わったり、夫の体調が良くなったりと、食べものを変えることで体が反応することを実感した。

料理の写真や動画投稿のコミュニティで様々な人と繋がって知識や交流を深めた安藤さんは、憧れのメディアへアプローチしたり、気になる食材は製造元まで問合せたりと、持ち前の行動力が爆発。
貪欲に学び、その知識や経験を伝えたいと、ローフードの講座や自ら「プレイティング」と名付けた美しい料理の盛りつけから写真撮影、現在は、セルフプロデュースのためのSNS講座まで、マルチな才能を発揮している。

なぜ短期間で一気に階段を駆け上れたのかを聞いてみた。
「腹をくくったからでしょうね。娘を思えば、やるしかない、と覚悟ができ、道が拓けました。好きな海外ドラマもフラワーアレンジもすべてが今に繋がっています。人生に何一つ無駄はないですね」。

頑張る後ろ姿を娘に見せたいと微笑む安藤さん。45歳にしてトップスピードで駆け続ける。

 

料理家 ローフード・麹・発酵LAB happycheesekitchen 主宰
安藤 千英さん

福岡県出身。割烹料理屋の長女として生まれる。家政科を卒業後、21歳で結婚、一男一女をもうける。フラワーアレンジなどを学びながら、38歳で二女を出産。不慮の事故をきっかけにローフードに出合い、学び始める。インスタグラムをきっかけに全国に活動の幅を広げ、企業のレシピ開発、雑誌やウェブでのライター活動、セルフプロデュースのためのSNS講座なども行う。2016年からELLEgourmet専門料理家に認定。
●インスタグラムアカウント/@happycheesekitchen

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