インタビュー

甲木正子さん/常に素直に、前向きに。 女性達のエネルギーを 力強く活かすために。

 

甲木正子 (かつき まさこ)さん
西日本新聞社 北九州本社 営業部長
Profile/1964年北九州市生まれ。福岡教育大学卒業後、男女雇用機会均等法が施行された翌年に西日本新聞社入社。27歳で結婚、30歳で息子を出産するも後に離婚しシングルマザーに。東京支社報道部、北九州支社経済部デスク等でキャリアを積み、2009年には韓国・釜山駐在記者として友好紙の釜山日報に派遣。帰国後は企画局アジア室次長、子供用紙面の開設準備やデスクを歴任し2013年3月より現職。

 

常に素直に、前向きに。 女性達のエネルギーを 力強く活かすために。

「名刺1枚で、大企業のトップにも俳優にも会える。新聞記者は3日やったらやめられません」。甲木さんは長らく男社会だった新聞社で活躍する、女性記者の草分け的存在だ。結婚、育児にキャリアアップと、先駆者ゆえのハードルも多かったが、自分のため後進のため。まっすぐな情熱としなやかな心で、道なき道を拓き続ける。

ようやく開いた「狭き門」

「書くことは苦にならないし、人と会うのも好きだから」。何の気負いもなく入社したが、同期の27名中、女性は甲木さんだけ。均等法以降の女性記者は1つ上の先輩が1人しかいなかった。「試しに入れた君達が辞めるなら、女性は育てても無駄と判断する。来年から女性の採用は見送るぞ」との上司の言葉に「私たちが全責任を負わされるの?」と理不尽を感じたが、既に甲木さんは仕事に夢中で、辞める選択肢など全くなし。入社2年目で長崎総局に配属され、念願だったサツまわり(県警担当)の記者になると水を得た魚のように飛び回った。地域で今、何が起きているのか。情報をより早く正確に、詳しく読者に伝えたい一心で市民の声を丹念に拾い、時にはベテラン刑事から様々なことを教わりながらスクープ記事も手がけた。そんななか、男性記者と社内結婚。同社の女性記者で初めてのことだった。

自らの枠を広げていこう

若いうちに子どもを生みたい、と激務だった社会部への異動打診を断ったところ、経済部に内示された。「経済なんて興味も知識もまったくない」。愚痴を漏らすと「記者として長く働くつもりなら、知らない分野を学ぶことが大事。つべこべ言わずに行け」そう先輩記者に諭され、経済記事を書くスキルを身につけた。

40代後半で釜山駐在の内示が出た時も「韓国に行ったこともなければ言葉も分からない」と嫌々だった。しかし市役所職員の先輩女性に「この歳になると、自ら未知の分野に飛び込もうとはしないでしょう?会社がミッションを与え、あなたの枠を広げてくれる。ありがたいことよ」とアドバイスされ、韓国語を猛勉強して赴任。現地の記者達と過ごした1年は、視野を広げるかけがえのない経験となった。 上司や友人の助言を素直に受けとめる柔軟さ。これが彼女を飛躍させてきた、大きな力の源だ。

与えられた場で力を尽くす

「働いていれば意に染まない異動や望まぬ業務につくこともあるでしょう。それでもそこで力を尽くせば必ず自分の糧となり、支えてくれる人も現れます。仕事を通じて広がる仲間や友人は私の宝物。その宝物を胸に、私はいつも異動のたび、この仕事をしてよかった、と思うのです」。

現職につくまでの6年間で、甲木さんは何と7回も辞令を受け取った。男性のロールモデルとはかけ離れた経歴だ。「出産も東京支社への赴任も女性初。前例がなかった私はもう覚悟していますが、今後は女性のキャリア形成も大切にして、後輩達が希望を持てる仕組みづくりを望みます」。男女雇用機会均等法の施行から約30年、女性の力を存分に発揮できる社会までもう一歩。一線で煌めき続ける彼女の輝きは、後進の道を明るく照らしている。

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