2016年7月10日参議院選挙において、選挙権年齢20歳以上から18歳以上に引き下げられてからの初めての国政選挙が実施されました。
18歳、19歳の有権者数約240万人が加わった選挙となりました。
選挙とは、そもそも国民の権利の行使であります。
民主主義において、自由には責任、権利には義務が相関しております。
自由や権利だけを主張するのではなく、責任と義務をどう果たしていくか、それをどう教えていくのか?ということも選挙権が18歳、19歳にも引き下げられたことで、権利を得ましたので、しっかりと教育において教えていく機会が増えていかねばならないことでしょう。
さて、選挙は主権者である国民が政治を行う者を選ぶ行為であります。よって、主権者から選ばれた者は法に基づき権力を行使するので、いわば選挙そのものが国を動かすものである。
そもそも歴史的に選挙はどのように生まれたか?
近世ヨーロッパのフランスが最初と言われています。絶対王政が続いた当時の世界において、権力の集中を国民に配分するために生まれたのが選挙であります。
時代が移り変わり、現在、世界の大半が18歳以上の選挙権となった今、日本においても憲法改正における国民投票の投票権の年齢が、18歳以上と定められたことに合わせた措置でもあります。
選挙権という権利がもたらされたので、新たに義務も課さねばならないのではないか?という議論も当然あります。
選挙権が引き下げられたのだから、民法における成年適用年齢の引き下げや、少年法の引き下げなども議論を尽くさねばならない課題です。
一方で、近年、日本において投票率低下及び高年齢層による投票率の集中が問題視され、国民の幅広い年齢層から政治へ意見が反映されていないのではないかという議論も度々ありました。
また経済的に安定していることによる政治への無関心が広がっていることも一つあるのかもしれません。
バブル崩壊以降、20年近くデフレが続いたことで平均給与の低下に直面しているものの、日本のインフラ整備率は世界の群を抜いています。現に水道水がそのまま飲料水として飲める国は世界において、いまだに10数カ国ほどと言われ、中でも日本の安全基準は世界最高と言われます。
経済的停滞が続きましたが、水道・ガス・電気・交通という主要インフラが整っており、国民から政治にインフラを求めることが随分少なくなりました(もちろん人口減少、人口都市集中からの過疎化が進む中、地方ではまだまだインフラを求める声はたくさんあります)。社会的インフラ整うことで、国民からの政治の要望が減っていったのではないかとの話もあります。
また、政治家の不祥事が多く、国民のあこがれの職業から低下していることも一つと思われます。よく言われることが、清く正しく美しいが無能な政治家と、グレーだが優秀な政治家はどちらが良いのか的な議論があります。もちろん、当然ながら清く正しく美しい優秀な政治家が望まれますが、人間は全てが100%ではないのもまた事実。かといって、グレーな方を放置しても良いのか!?というのも当然です。問題は、国益全体を考えてどうなのか?ということでしょう。それこそが主権者からの投票行動によって判断が示されることだと思います。
兎にも角にも、政治への関心が低下することは、権力監視機能の低下、あるいは健全な権力者が生まれない構造にも繋がります。
昨今、インターネットの普及により、マスメディアだけでなく、より多くの情報を取得できるようになりました。
しかし、それは逆に情報過多となり、何を判断基準に選択すればよいのか?という新たな問題も浮上してきています。
重要なことは、
1、事実に基づいた情報なのかということをしっかり調べることです。
世の中に流れている情報には、残念ながら、必ずしも全てが真実・事実という情報だけではありません。物事を優位に進めようと、ねつ造して伝えようと意図する者も残念ながら存在します。あるいは、明確に間違って情報を伝える人もいます。よって情報を受け取る者は、常に客観的に事実に基づいた情報なのか!?を調べるクセを身につけましょう。
2、望遠鏡を見ながら顕微鏡を見る。
世界の中に日本があり、日本の中に地域があり、地域の中に家庭があります。何事も望遠鏡を見ながら顕微鏡を見る、広い視野から身近な視野を見る、面から点を見るという視点の広さを持つことが重要です。
歴史的な話でいえば、日本の近代史の授業では、いきなりペリーが来ることから始まり、幕末の志士たちは右往左往しながら明治維新に向けて動き出したと伝えることが多いので、かなり状況把握するのに苦労します。
しかし、ペリーには日本に来る理由が存在しています。ここでは割愛しますが、世界史の中に日本があるわけで、何も突然ペリーが湧いて出てきたわけではないはずです。
よって、情報を分析するには広く大きな視点から、辿っていくことが重要です。
今回の参議院選挙においても、各党、各候補者がそれぞれ意見をぶつけ合いました。
重要なことは我々有権者、そして新たに18歳、19歳の新有権者が、各党、各候補者の主張する意見について、事実関係に基づいて調べ、広く大きな視点から辿っていき分析する!ということが重要ではないかと考えます。
文/西坂智成
プロフィール
西坂智成
株式会社Brain Communications代表取締役
産経新聞西部本部 電子新聞販売顧問、「ジャーナリスト井上和彦」海外取材・講演企画テクニカルオペレーター、ファイナンシャルプランナー
福岡県嘉麻市出身。地元高校卒業後、大手スーパー、地場コンクリート会社、外資系生命保険会社を経て、企業会計分析・創業支援コンサルタント、ファイナンシャルプランナーとして、「新聞経済欄が理解できるようになる」経済塾を開講。
また、会社経営の傍ら、ジャーナリスト井上和彦氏のオペレーターとして師事し、日本の近現代史の真実を広めるため、井上氏と共に積極的に海外取材を行う。