ふんわり優しい笑顔が印象的な吉開ひとみさんは、大正2年創業、今年103年を迎えたものづくりの会社『宮田織物』の4代目社長。「家業を少し手伝うつもりで」父が社長を務める同社に入り、4人兄弟の2番目ながら「気がついたら社長になっていました」と大らかに笑う。
久留米絣の里・筑後市で創業した『宮田織物』。久留米絣に始まり、綿入れ袢天の生産ではかつて日本一を誇り、近年は婦人服と、時代のニーズに応じた製品を展開。100周年を機に吉開さんが社長に就任した。それまで卸が主だったが「お客様の声を聞きたい」と、現在は直営3店舗のほかインターネット通販にも力を入れている。
ものが売れない時代となり、ファッション業界はローコストの服があふれる。そんな中にあって、老舗といえども決して順風満帆ではない。吉開さんは言う。「私たちのテーマは思いを込めたものづくり。選び抜いた糸で、オリジナル素材『和木綿(わもめん)』を織り上げ、デザイン、製法まで一貫生産にこだわっています」。そんな『宮田織物』が生み出す製品のよさに惚れ込む人は多く、最近は海外からも引き合いが多い。世界的ブランド「マリメッコ」などの仕事を手がけるフィンランドの人気デザインユニット「カンパニー」から声がかかり、和木綿で作った綿入れ袢天がヘルシンキ現代美術館に展示されたり、アメリカの会社から大量の織物生地の注文が入ったり。
「父である宮田会長の口癖は『社員さんを大事に』と『見えないところも手を抜かない』。その積み重ねが会社を育て、信頼につながるから、と。私たちはその思いを胸に、手から手へ、ひと織り、ひと針、愛情こめたこだわりのものづくりで、世界中に笑顔を生み出していきます」。伝統を受け継ぎつつ、吉開さんは新たな道を切り拓く。
『宮田織物 株式会社』代表取締役社長
吉開 ひとみさん
筑後市生まれ。香蘭デザインファッション専門学校を卒業後、1981年『宮田織物株式会社』に入社。3代目社長の父親が導入した、当時は珍しかったシミュレーションコンピューターで生地のデザインや商品企画などを担当。2009年常務となり、2013年から現職。自営業の夫と子どもが2人いる。宮田織物の製品は博多リバレイン、モラージュ佐賀などの直営店をはじめ、全国の観光地や百貨店、モール、ネット通販などで販売。また、様々なドラマで俳優や女優の衣裳に採用され、雑誌やテレビでの紹介も多数。
▲1.博多リバレイン地下2Fの直営店。洗練された空間に色とりどりの服やストール、バッグ、財布まで多様な製品がそろう。母娘で買い物する姿も。
▲2.絞り袋1,200円(税抜)~など小物も充実。
▲ 3.筑後市羽犬塚にある工場。従業員75名の大半が女性で、中国とベトナムの実習生が十数名在籍。子育て応援企業として表彰された経歴もある。
宮田織物 博多リバレイン店
福岡市博多区下川端町3-1 博多リバレイン地下2F
http://miyata-orimono.co.jp
TEL/092-292-4033
営/10:00~17:00
休/日曜、祝日
※運営会社『宮田織物株式会社』佐賀店、宮崎店あり