野中 昭彦(のなか あきひこ)先生
中村学園大学流通科学部 准教授
福岡県春日市出身。専門はコミュニケーション学。主に対人コミュニケーションと異文化間コミュニケーションを研究中。最近では「高齢者との世代間コミュニケーション」や「メディアコミュニケーション」、「コミュニケーションでの他者との意味の擦り合わせに関する研究」を行っている。ゴルフをこよなく愛する。
恋愛とは、異文化間コミュニケーション。
相手との関わりを円滑にする秘訣とは?
「恋愛とは、一番身近にある異文化間コミュニケーションです」と話してくれたのは『中村学園大学』でコミュニケーション学を教える野中昭彦先生。恋愛だけでなく、ビジネスやすべての対人関係において役立つ話を聞くことができた。
異文化間コミュニケーションとは?
コミュニケーション学の歴史をたどると、2500年前のギリシャ時代にまでさかのぼる。「アリストテレスやソクラテスといった哲学者が、演説の場で一般大衆へ向けてその理論をいかにわかりやすく伝えるか、と考え誕生したのが「レトリック」です。これは、表現の仕方や話の組み立てなど、聞き手に効果的に伝えるための技法です。そこから、1対1の場合にも応用されたのが現在のコミュニケーション学です」と先生は話す。そしてここ40年間ほどで、日本企業が海外に多く進出した際に、外国人から見たら「日本人は妙な動きをするが、なぜだろう?」という疑問が多々発生したことから誕生したのが “異文化コミュニケーション” という分野なのだ。
異文化コミュニケーションの理論の一つに「不確実性減少理論」という考え方がある。それは、まったく違う文化的背景を持った人同士が出会ったとき「相手は一体何を考えて、なぜこんな行動をするのだろう」という疑問にとらわれるのではなく、“最初から自分とは違う存在だ” と捉える考え方だ。「恋愛で言えば、男女間で『何で言ってくれないの?』『何で分かってくれないの?』という衝突を避けたい場合に、『分からないこと』が前提であるこの考え方が応用できると思います。男性も女性もそれぞれステータスや常識があり、培ってきたものは別の文化である、と認識できるだけで関わり方が変わってくるのではないでしょうか」と、野中先生は話す。
ビジネスの場でも影響する、文化の違い。
「プレゼン力」や「コミュニケーション能力」という言葉を最近よく耳にするのは、国際化するビジネスの場では、欧米人に比べてそれを苦手とする日本人が圧倒的に多いから。そこにも、文化の違いが影響している。日本文化は元々、個を大切にして他者を尊重する「個人主義」ではなく、“和” と呼ばれるような他者との調和や、人と人の間の関係を大切にする「間人主義」である。「英語は結論や否定・肯定を文頭でストレートに伝えますが、日本人は結論の部分をあいまいにしがちです。意向を汲み取るのが日本人のコミュニケーションとされているので、誤解が生じたときは、日本人は聞き手の汲み取り方が間違っていた、と解釈されることが多く、欧米では原因は話し手にあるとされるのです」と先生。
相手とは文化的背景も含めまったく別物だという認識を持てば、誤解や衝突を避けられる。そして恋愛においても、それは異文化コミュニケーションであり、互いに異なる個の存在だと認識しておくことが、すべてのコミュニケーションを円滑にする秘訣になるのだ。
今回のゼミでは、「他者との違いを知る」ということに着目し、違いを楽しみながら人との関わりをわくわくさせる、「効果的なコミュニケーション・恋愛編」について詳しく聞いてみよう。