木場 真一(きば しんいち)さん
株式会社キバックス インターナショナル代表
長崎県西海市出身。大学卒業後に一度就職するも、経営学を学びたいと退社し、渡米。ワシントン州のCity University of Seattleで経営学修士号(MBA)を取得し、富士通にてトヨタ自動車の海外生産物流システムに携わりビジネスのグローバル化を実感。その後、大手英会話スクールで営業責任者として英語の重要性を伝える。「将来国際社会で活躍する子どもたちを育てたい」と、英会話のみでなく「ポジティブ教育」を学べる『キバックス インターナショナル』を設立。
木場さんへ3つの質問
Q.この仕事に向いている人は?
A.ひとの可能性、変われることを信じることができる人。
Q.あなたのバイブルは?
A.雑誌『クーリエ・ジャポン』。教育や経済についての世界の最新情報がわかります。
Q.あなたのメンターは?
A.「習慣」の専門家である佐藤 伝さん。起業準備中に出会い、たくさんの刺激とアドバイスを頂きました。
グローバル社会を生き抜く力を育てるために。子どもたちの「心」を鍛え、居場所をつくる。
「今週、お休みだと分かると泣いちゃうんです」と保護者からの声がある英会話スクールがある。代表の木場さんも指導にあたる「ポジティブ教育」が実践されている。大人も子どもも「心の強さ」が求められる現代、英会話と心の教育を融合させたこのスクールではどんなクラスが展開されているのだろう。
息子の誕生で変わった「教育観」
大手の英会話スクールを退職し独立したきっかけは、長男の誕生。職業柄、「家でも英語を教えているんですか?」と聞かれることが多かった。「息子に英会話を学ばせようとは思っていなかった。自分が子どもの頃から英語を学んだわけでもなかったので」。ただ、もし息子が楽しめるならと、いくつかのスクールを見学したが、通わせたいと思える所がなかった。「英会話スクールはどこにでもある。自分はそれだけじゃない魅力を求めているんだ」と気がついた。「それなら自分で作ってしまおう」。親目線で考え、自分の子どもに身につけてほしいと思うのはこれからのグローバル社会で英語と同じく重要な「強い心を育む教育」だと感じ、これを融合させた世界基準の新しいスクールをつくろうと決意した。
サッカーの強豪ユースチームやアメリカの教育機関を視察し、得られた知識や前職での経験に科学的根拠を与えるものが、欧米で導入が進んでいる「ポジティブ教育」だった。ネガティブな感情を認め、それに対処する方法や、お互いを褒め合うことで自分の長所を自覚しながら、自信を身につける。日本には浸透していないが、これからの教育に必要なもの、と木場さんは確信した。そして、専門家と協働でプログラムをつくり、退職後半年で現在の「幼児・小学生専門の英会話ポジティブ教育スクール」を開校する。
大人・ビジネスマンにも拡げていきたい
開校後すぐには、「ポジティブ教育」を理解してくれる人が少なかった。まだ日本では事例も実績もなかったが、興味を持つ人が現れ、学校や家庭で「自分の意見を落ち着いて積極的に伝えられるようになった」と保護者からの声が上がるように。授業の最初に先生が「今日はどんなことがあった? どんな気分?」と話しかけ、心の状態をよくする「ポジティブクラス」を設けることで、学びもすんなりと身に着くのだ。「ネガティブな感情を持ってもいいんだよ、と認めてあげると、人間は素直になれる。心が整えば、能力や可能性を最大限に引き出すことができるし、何より子どもたちがここを“居場所”だと感じ、喜んで通ってくれるのが一番嬉しいこと」。
今後は現在のクラスの卒業生も通えるようなコースや、大人向けのセミナーを考えている。心のトレーニングに、子どもや大人といった線引きはない。すべての人が活躍できる人間になるための育成法を普及していきたいと笑顔いっぱいで語る木場さんのもとから、世界的リーダー輩出の予感さえ感じられた。