震災をきっかけに福岡へ。
“よそ者”だから分かる糸島の魅力を伝えたい。
渡邊 美穂さん(41歳)、精二さん(40歳)、三多くん(さんた/5歳)、はるちゃん(2カ月)
夫婦ともに新聞記者だった渡邊さん一家が東京から糸島への移住を決意したのは、東日本大震災がきっかけだった。当時生まれて間もない三多君を連れて福岡の実家へ避難していた美穂さんに、「仕事を辞めるのは今だと思うんだよね」と精二さんは告げ、美穂さんも了解。夫婦ともにいつか自然の多い場所で暮らしたいと考えていたが、そのタイミングは今だと決断した。
独身時代、記者生活の経験から、美穂さんにはていねいな暮らしをしたい、という思いがあった。「当時は多忙な毎日で食事はほぼ外食でした。夜に菓子で空腹をなだめながら原稿を書き、米を炊くのも年に数回という状態。でもあるとき食の取材を通じて、普段の食事を少し変えてみたら体調が格段によくなったんです。食の大切さを痛感すると同時に、このままの生活では、いずれ結婚しても子どもを産んで育てることができない、と危機感を感じました」。山や海が近くにあって、空がきれいで、その土地で獲れた食べ物を食べて…。移住先を糸島に決めたのはそんな背景もあった。
移住してからは、海でとった海藻を自宅の台所で調理したり、うめぼしを漬けたりと食生活が一変。庭に生えたつくしやよもぎを摘むのは季節を感じられるし、気持ちが癒される。購入した一軒家のリビングや洗面所等の内装は精二さんが手がけた。手作りのブランコや薪ストーブもある温かみのある家だ。精二さんは夫婦で子育てをしたい、と現在は在宅で仕事をしている。「子育てをするには絶好の場所です。地元の人は田舎で不便だというけれど、この自然はかけがえのない宝物だと伝えたい。よそから来た移住者だからこそ分かる地域の魅力を地元の人にも伝えていって、ここはすばらしい場所なんだよ、と価値を再認識してもらいたいです」。
ていねいな暮らしを手に入れた渡邊さん一家。これからは子どもたちと家庭菜園を作り、野菜を育てる予定だ。移住生活の楽しみはまだまだ広がる。

1.美穂さんといっしょに作った三多くんお気に入りの秘密基地。/2.はるちゃんを抱っこして手作りのブランコに乗る美穂さん。/3.庭に積み上げられた薪は割ってストーブに使う。/4.初めて自分たちで育てたジャガイモを収穫した三多くん(当時1歳)と精二さん。
目次
- わたしたちのまちの魅力 再発見! 福岡×移住
- [福岡×移住・case1] 震災をきっかけに福岡へ。“よそ者”だから分かる糸島の魅力を伝えたい。
- [福岡×移住・case2] 決め手は面白そうなことができそうな福岡の空気感でした。
- [福岡×移住・case3] 福岡は、「洗練された田舎暮らし」ができるまち。縁とタイミングで拠点を福岡へ。
- [福岡×移住・case4] 古民家に一目惚れし、10年計画でうきはへ移住。
- [福岡×移住・case5] 子どもたちに“ふるさと”を作りたくて、北九州でゼロからの開業。
- [福岡×移住・地域のつなぎ手にききました] 福岡の「余白」と「可能性」にかけてもっとおもしろいまちへ。
- [福岡×移住・地域のつなぎ手にききました] 移住者と地域の橋渡しはさながら“仲人”のような仕事です。