私の場合、偶然出合った本のほうが、より面白く感じます。人から紹介されたものなど、向こうから飛び込んできた本は、自分が探し求めて読んだ本と比べて期待が大きすぎることもなく、落ち着いて楽しめるのが魅力です。私が「大好きな人に手渡したい本」として紹介したいのは、いしいしんじ「ぶらんこ乗り」。社会で人間関係の壁にぶつかった人の、こころの孤独に寄り添ってくれる。また、孤独の中にも光明が感じられる。そんな、大好きな物語です。
私が考えるに、本の読み方は自由で、人それぞれどう読んでもいい。個人的には、声に出す楽しみ方が、もっと身近になってほしいと思います。まだ皆が文字を読めなかった頃は、1人が語り手となり、わいわいと社交の場で語りあった。そんな本を介した交流の場が、また広がればと願っています。
直方市立図書館 館長 │ 野口和夫さん
絵本の読み聞かせや朗読、語りを大人同士のコミュニケーションの手法として学び活動する団体「宙(そら)のサカナ」代表。地元や八幡西図書館など各地で朗読会を開いている。
目次